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写真2(左) 「フォーマー」を組み込んだ製袋機
写真3(下) 現在の形状になるまで数々の試作品の製作が行われた。 |
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ォーマーとは文字通り、形をつくるものという意味。受賞製品の形状だけからでは何をつくるものかを推測するのは難しいが、実はスナック菓子などの袋を作製する製袋機の構造部品である。水兵や女子高生が着るセーラー服の襟に形状が似ていることから別名は“セーラーフォーマー”。ロール状に巻いてある袋の原紙を“フォーマー”に巻きつけて袋状にするものである(写真2)。
従来の製袋機は鋳物構造が多く重量物であるために取り扱いが大変だった。それをコンパクトで軽量にし、簡単に取り扱えるようにしたのが受賞製品で構成する製袋機。計量から封入、パッキングまでをワンパスで行うシステムのインラインマシンとしても有効な機能を有している。袋形状に合わせて1インチとびにフォーマーの形状を変える必要があるため、板金構造への変換は製作コストの削減を実現し、イージーオーダーによる速やかな受注対応が可能になった。
開発段階からメーカーとタキノ工業所のジョイントジョブで展開し、最適形状を目指しての十分な試作期間を経て製品化がなされている。その履歴の一部が写真3の試作品群だ。開発試作のポイントはしわが寄らずにスムーズに袋を成形するフォーマー形状の創出だった。加えて薄板構造の軽量型でありながら耐久性と強度をもたせることも重要なポイントになった。1分間に約120枚、1秒2枚の高速で製袋を行うためである。
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ォーマーは、原紙をすべらせながら袋状に巻き込んでいくセーラー(えり)部と、それを支えホッパーの下部となる円筒部、さらに機械本体にジョイントするプレートの3部品で構成されている。プレートは板厚9mm、セーラー部がエンボス仕様の板厚0.8mm、円筒部は板厚1mmでいずれも材質はステンレスである。セーラー部をエンボスにしたのは原紙をスムーズにすべらせるため。表面がフラットだとかえってすべりが悪いという。
試作で大きなポイントなったのがセーラー部の形状。幾度かのトライの末に決定したのが、写真4で示すように背面をフラットにした形状。背面にR(アール)をつけるとスジ状のシボが入るためである。外周をレーザーカッティングし、R曲げは円錐状のロールをもつ特殊ロール機で、鋭角(45°)曲げは汎用のプレスブレーキで曲げている。
セーラー部と円筒部はYAGレーザー溶接によって接合。溶接状態が悪いと原紙が引っかかり不良品をだすために緻密なビードの精密溶接が施され、強度保持への配慮も十分になされている。
円筒部は平板をレーザーカッティングし、袋がゆがまないように真円に曲げたもの。下部が交差しているが、袋の綴じによって右が上にくるか左が上にくるかが決まるという。従来機はパイプを使っているが、板金構造に変えたことによりきめ細かい対応も柔軟に行えるようになった。
セーラー部、円筒部、プレート部3部品の組み付けは、YAGレーザー溶接とTIG溶接で行われているが、各部品とも板厚が異なっており、異なった板厚の接合を歪みの発生もなく高精度に行われていることも、金賞受賞の大きな評価要素となっている。
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写真4 背面はフラットになっている。全面にRを付けるとスジ状のシボが入るためだ。R曲げは特殊ロール機を使用。 |
写真5 45°の鋭角曲げは汎用プレスブレーキを使用 |
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写真6・7 袋が滑り落ちる円筒部は平板を真円に曲げている |
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写真9,10 上下から見た形状 |
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品種小ロット生産に適合した生産システムとして板金加工は、時代ニーズの波に乗りその適用分野を拡大してきたが、最近では右肩ならびの成熟業種として一つの転換期にさしかかっている。そのような状況からいかに脱却するか。そのひとつが加工の原点に今一度立ち返ってオンリーワン企業としての対応を強めることであり、部品加工メーカーからセットメーカーとしての対応を強め付加価値生産を実現することである。
タキノ工業所の今回の受賞はその対応を実証したものであり、板金加工メーカーの新たな針路を指し示すものとなっている。
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■株式会社タキノ工業所
本 社 京都市山科区北花山中道町111-3
営業本部・草津工場 滋賀県草津市馬場町
字岩川原1200-19
TEL 077-563-3351
穴水工場 石川県鳳至郡穴水町字北七海ヲ-17
TEL 0768-52-3235
創 業 昭和39年
設 立 昭和42年
代表者 田中 米造
資本金 6400万円
社員数 90名
事業内容 精密板金加工。工作機械の製造および
加工。以上に関する全ての事業。 |
写真11 組立前のフォーマー |