加工にあたっては、クリアしなければならない難題が二つあった。一つは、同芯度の問題である。円筒を順々に重ねていく際、必然的に6点の円筒の中心点(同芯度)は同じでなければならないからだ。
「中心の位置決めが、円筒ということもあり時間もかかったし、最も難題だった。ところがあるとき、現場の社員から"五重塔方式"というアイディアが出てきた。確かに五重塔は、中心に一本の芯棒が通っている。後は同芯度を出すための治具を考え出すだけ。しかしそこにたどり着くまでは、本当に大変な作業の連続でした」(高村隆晴専務取締役)
もう一つはYAGレーザー溶接機による溶接と真空ろう付け。裏側へのろうの漏れだし、溶接による歪みをなくすための取り組みもまた難題であった。特に溶接後の歪みは修正が効かないため、歪みをなくすことが絶対条件だった。最終的には、銀ろうの純度を高めること、溶接の火力を調整することによってクリアした。
結果的に、同芯度をだす治具の考案、ろう付けのノウハウ、さらにはYAGレーザー溶接機の存在がこの製品の量産化を可能にしたのである。
ちなみに受賞製品の燃焼筒を初代とすると、現在、加工しているそれは5代目。素材の見直しから、燃焼効率のよい製品形状、さらには歪みを全く出さない技術の高度化等々、一段と進化を果たしている。
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(写真4)
(写真2、3、4) 6つの円筒で構成されている。開口部はヘラ絞り、接合部にはスペーサーをかませ、ろう付けすることにより精度を高めた。
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