技を究める

メニュー優秀板金製品技能フェアホームページ |

 

第15回優秀板金製品技能フェア優秀製品
板金加工部品の部・金賞
厚生労働大臣賞


『デジカメのケース本体』
ツツミ産業株式会社(神奈川県相模原市)
(写真1) チタン、マグネシウム、ステンレスと異なった材質を使い、同一の積層簡易金型で同形状の製品をつくっている

 

 
(写真2)

写真2〜4  コーナー部の内アールは1.5mm、絞り高さ45mmで口開きの公差は±0.02mm以内。2部品を突き合わせてもぴたり合っている
作メーカーとして国内トップに位置するツツミ産業が、同一の積層簡易型によって、異種材を効率よく均一精度で深絞りする技術を開発した。

 「新素材を対象にして簡易型による深絞り技術を開発し、高度化することを目的に社内テスト用としてスタートさせたのです」と語る堤 健児社長は、試作の新たな世界を拓くために若手技術者でスタッフを編成。トライ・アンド・エラーのなかからデータを積み重ねて技術の共有化をはかり、新工法の開発に成功したもの。金賞を受賞した『デジカメのケース本体』がその成果である。



(写真3)


 
賞製品は、チタン、マグネシウム、ステンレスという異なった特性を持つ素材をすべて一つの簡易型で絞り加工を行い、同型の製品形状に仕上げたもの。3材質とも板厚は0.6mm。当然のことながら、チタン、マグネシウム、ステンレスともスプリングバック量、絞り率ともに異なる。マグネシウムなどは、常温では引っ張り強度が弱く、破断しやすい。一方、チタンは逆に強度が強く変形しにくいといった加工の難しさがあり、ともに絞りとしては難加工材のひとつ。材質に合わせて加工条件を変化させなければならない。

 「素材の特性に合わせて板押え力を調整し、材料の滑り・流れをスムースに行えるようにしたこと。そして応力を上部に逃がしてトリミング時に口開きが起こらないよう制御できたことが、最大の成功要因です」(堤社長)
加えてブランク材の形状、大きさ、位置も大きなポイントとなった。数十種類のブランク形状をトライして最適条件を割り出し、スリットなどを入れて応力を拡散させる工夫も凝らされている。


 
(写真4)
形は、第一絞りでは2mmほど浅く絞ってスプリングバック量を調整し、次にきめ押ししながら直角度を修整する方法がとられている。その結果、コーナー部の内アールは1.5mmを実現し、絞り高さ45mmで口開きの公差は±0.02mm以内。二つの部品を突き合わせたときの段差が100分の2mm以上あると人間の指先で判別できるといわれているが、ケースの表裏を合わせた突き合わせ部を指でなぞってもまったく違和感がない。

 ブランクのトリミングや切り欠きは3次元レーザー加工機で行っているが、ヘッドの振りに工夫を加え、機械特性を十分につかむことによって公差0.05 mm以内と十分に満足のいく切断精度を確保したことも成功要因の一つ。レーザーの高精度を示すために、稜の部分に3次元レーザーによる微細なマーキングが施されている。



(写真5) コーナーの稜の部分に3次元レーザーでマーキングが施されている
 
ツミ産業の検査態勢の充実ぶりには定評がある。複数の専任要員を置き、不具合部分の徹底的な洗い出しが技術高度化の推進力になっている。特に失敗例は積極的に社内で発表して全員で検証していくシステムをとっており、そのような態勢の中からマグネシウムやチタンの深絞り技術が生み出された。

 製品の軽量化が可能なマグネシウム、強度に優れるチタン、素材に高級感のあるステンレスは、水中カメラなどの特殊用途や商品の差別化のためにケースなどへの採用も検討され始めている。堤社長も深絞り技術を活用して、試作品だけでなく小ロット品の受注にも積極的に対応していきたいとしている。


■ツツミ産業株式会社
本 社 神奈川県相模原市橋本台2-5-30
TEL 042-771-0380
創 業 1965(昭和40)年
代 表 者 堤健児
資 本 金 1000万円
社 員 数 60名
事業内容 カメラ部品、OA機器部品、AV機器部品、計測機器等の精密試作加工専門
U R L http://www.tsutsumi-s.co.jp/
E-mail tsutsumi@tsutsumi-s.co.jp

堤 健児社長