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第15回優秀板金製品技能フェア優秀製品
機械的結合を主体とする組立品の部・銀賞

『PCBコネクタ装着装置』
多摩電子株式会社(神奈川県相模原市)
(写真1) 要求精度をクリアーするために溶接をできるだけ少なくし、リベットカシメ構造を採用している

 


賞製品は、電気的機能検査(ファンクションテスト)を終了してから手作業で組み付けられるPCB(プリント回路基板)の部品(絶縁シート、クッション、板金部品、ネジなど)に仕様漏れがないかをチェックする検査装置。従来は作業者の目視による検査が一般的だったが、人的作業のため、体調や疲れなどから見落としが生じがちで信頼性のうえでは万全とは言い難かった。そこでこの問題を改善する目的で製作されたのが受賞製品である。

査の仕組みは次のようになる。まずケースの上下にセンサーのついたプレス板をセットしたうえで被検査基板を下面のプレス板にセット。次いでケースの蓋を閉めてからケース上部のレバーを押し下げることで上下のセンサーが接触、導通した箇所が取り付け漏れということになる。導通した箇所は装置に接続されたパソコン画面で確認する。

 これにより、従来3分ほどかかっていた検査作業が瞬時にかつ正確にできるようになり、人的負担も飛躍的に軽減されることとなった。同時にPCBの大幅増産も可能となった。

 同社ではこの装置のうち、電気部品を除く筐体部分の設計・製作を担当。受賞に当たっては、高精度な組立品を板金加工で速く安く完成させる仕組みを構築した点が高く評価された。従来は鋳物フレーム体でしかつくれない製品だったためだ。

 「鋳物品の板金加工への転換というのは当社が取り組んでいるテーマの一つ。板金加工化することにより、リードタイムの削減効果が顕著でコストも安く抑えることが可能となるからです。特にPCBはモデルチェンジの激しい製品のため、設計変更に迅速に対応できる板金加工は非常に有効なのです。その優位性を今回の製品づくりでも十分にアピールできたことが受賞につながったと確信しています」(奈良小太郎常務)
 
(写真2)


(写真3)

写真2〜3 被検査基板を装着した状態(写真上) と外した状態



(写真4) スイッチ、センサー部
 
作にあたって最も留意したのが精度管理。材質はSUS430(一部A5052P)で、板厚は1.6mmと2.0mm。これに対して要求精度は±0.1mmだったからだ。

 「板金加工の世界で±0.1mmは厳しい。部品点数も50点前後と多いですからね。したがって図面には要所要所に細かく寸法を指示しました」(ハードウェアー設計課小島直哉氏)

 
(写真5)


(写真6)
写真5〜6 レバー部など強度が必要な部分だけを点付け溶接し(写真左)、他はリベットで組み上げている
 そこで加工に当たっては溶接ができるだけ少なく済むようにリベットカシメ構造を取り入れることとした。レバーや軸類などある程度の強度が必要な箇所を4カ所だけ点付け溶接とし、残りの接合箇所は全てリベット止め(134カ所)としたのである。リベット構造の利点は個別の部品ごとにあけたリベット穴の位置がそのまま精度となるために、位置ズレの問題がなく、組み上がってからの寸法違いが解消されることだ。しかもNCT加工で簡単に穴をあけられるので、個人の技能差によるバラつきがない。さらに今回は結合部分の穴にリベットを差し込み、引っ張り上げることで裏側が膨張してかしまるブラインドリベット方式を採用、裏側に手を回さなくて済む片側施工で結合作業を完了させた。


「大幅な工数削減が実現し、精度出しはもとより、コストダウンやスピードアップという点でも大きな効果を上げることができました。溶接による歪みや焦げの問題もなく、仕上がり品質も申し分ないと自負しています」(奈良常務)

 また切削加工部品を一部既製品のみと最小限に留めたこともコストダウンという点では大きなメリットをもたらした。検査装置は現場での評価も高く、モデルチェンジを繰り返して活躍の場を広げている。さらにそこで培ったノウハウはこれだけには留まらない。携帯電話の基板などにチップを埋め込むマウント作業を行う装置の筐体づくりにも生かされている。

 創意工夫を重ねて板金加工の可能性を探る多摩電子は、今後も技術の幅を広げるために飽くなき挑戦を続けていきたいとしている。


■多摩電子株式会社
本 社 神奈川県相模原市橋本台3-2-26
TEL 042-773-7761
創 業 1966(昭和41)年9月
設 立 1969(昭和44)年9月
代 表 者 大林 根生
資 本 金 1300万円
社 員 数 72名
事業内容 電子機器構造設計、電子計算機筐体、金融機器筐体、自動改札機筐体、発電制御中央電子盤筐体、その他通信・情報・電子機器の精密板金、プレス部品加工一式
E-mail tama-denshi@m9.ffn.ne.jp

奈良常務(右)と、設計を担当した小島さん