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第15回優秀板金製品技能フェア優秀製品
微細加工部品の部・金賞
『蝶』
株式会社最上インクス(京都市右京区) |
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(写真1) 自社の技術力を表現するために、5年前よりてんとう虫など昆虫シリーズの製作に取り組んでおり、今回は『蝶』となった |
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(写真2)
写真2〜3 真上から見た状態の表と裏 |
昨年の『てんとう虫』に続いて微細加工部品の部で2年連続の金賞受賞。各種展示会の出展作として特別に製作された昆虫シリーズの一環だ。
「当社の技術力を分かりやすく表現するには昆虫が一番という考えから、5年前より取り組んでいます。実際、展示会での注目度も抜群で、大変好評です」(鈴木三朗社長)
精密で微細なモノづくりを追求して行くとマイクロマシンにたどり着くとの認識があって取り組んでいる側面もある。小さなボディに精緻な機能を備えた昆虫はその最適なモデルとなるからだ。“薄板金属加工のコンビニ”という看板を掲げる同社ならではのこだわりのスタンスともいえる。
ただ同じ昆虫でも何をどうつくるかは、技術開発グループで試作金型の設計・製造を担当する北 和人氏に一任されている。鈴木社長が北氏の豊かな着想力・表現力を高く評価しているからにほかならない。
「人目に止まりやすく、誰もが親しみやすいものを意識して選ぶのがまず何よりも大切です。実際の製作に当たっては昆虫それぞれが持つ特徴を出すように心がけています」(北氏)
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(写真3) |
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今回の受賞製品である蝶については特徴を出すために羽根と足を連結させて一体となって動くように工夫した。「木の枝などに止まっているときは足を開き、羽根のほうは閉じた状態で、飛び立つときは羽根を開き、足を閉じた状態」(北氏)となる本物の蝶と同じ動作をさせたいためだ。
材質はSUS304で板厚は0.1mm。要求精度は±0.1mm、加工時間は約20分。実加工に当たってはまず羽根と足が一体化した左右対称のパーツ各1点と胴体部分1点を別々にレーザーで切り抜く。足の部分は幅0.2mmの細さで、しかも第1関節部分を表現するために先端部分は斜めに切り込みを入れる念の入れよう。羽根の部分も膨らみを持たせるために専用金型をつくって絞り加工を施すといった芸の細かさだ。その後、足の部分はプレスで直角に折り曲げる。
一方、0.2mmの触覚など細かい細工が施された胴体も、切り抜いたあとに曲げ金型を使って中央部分を軽く絞ってから全体を内側に曲げている。最後に胴体にあらかじめあけてある穴のなかに、羽根と連結した足の部分をはめ込み、1回カシメたあとに、胸の部分を絞ることで全体を一体化させて完成品となる。
一連の作業で最も苦労した点は最後の組立部分。足をはめるためにあけた穴が最後の絞り作業で割れてしまうからだ。穴の位置をずらしたり、穴の大きさを細くしたりするなど形状を変えて「10回ほどやり直した」(北氏)という。その結果、晴れてイメージ通りの出来栄えとなり、2年連続受賞の快挙につながった。
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(写真4) 今にも飛び立とうとする臨場感がある |
「2年連続ということで、正直いってうれしいですね。やはり親しみのあるものを分かりやすく表現したのが評価されたのだと思います」(北氏)
次回に向けた構想も着々と進行中だ。候補の一つとして上がっているのがアメンボ。金属の張力を生かして水に浮かぶ仕組みになっているのが特徴だ。こうした周囲をうならせる着想は北氏ならではのもの。鈴木社長が高く評価する所以だ。
「微細加工の技術そのものというよりも、こうした発想力が何よりも素晴らしい。極論すると、できあがった製品を見れば誰でも同じものはつくれるわけですからね。社内にある加工機を使って一枚の金属板から何をどうやってつくるのが最適かを考える。そうした力を養っていくことが大切だということを彼は自ら体現しているのです。周りのいい刺激にもなっています」(鈴木社長)
最上インクスとしては今後も薄板の金属加工中心という方針には変わりないが、樹脂などを組み込んだ成形加工のほか、開発部門にも進出するなど幅の広い展開を視野に収めている。
「実際、企画・設計などの引き合いも出てきています。そうしたモノづくりの上流に攻め込んでいくときには、豊かな発想力が何よりも問われるわけです。その意味でも昆虫シリーズの製作は大いに有益となる。引き続き社を挙げて力を入れていこうと考えています」(鈴木社長)
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■株式会社最上インクス |
本 社 |
京都市右京区西院西寿町5
TEL 075-312-8775 |
創 業 |
1950(昭和25)年12月 |
設 立 |
1965(昭和40)年1月 |
代 表 者 |
鈴木 三朗 |
資 本 金 |
2000万円 |
社 員 数 |
67名 |
事業内容 |
電機部品・電子部品・OA機器・分析機器などの精密試作加工、金属プレス加工および精密金型の製作 |
U R L |
http://www.saijoinx.co.jp |
E-mail |
sales@saijoinx.co.jp |
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鈴木三朗社長 |
製作を担当した
北 和人さん |
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