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第15回優秀板金製品技能フェア優秀製品
板金加工部品の部・銅賞受賞


『エアプレインヘッドカバー』
西垣金属工業株式会社(京都市南区)

(写真1) 航空機のエンジン部分に取り付けるヘッドカバー。材質はジュラルミン。板厚2.0mm。精度±0.5mm

 

 


(写真2)
(写真3)
写真2〜3  厚みが必要な部分は元の板厚を保つなど、絞り込みの過程で板厚を自在に加減できることがヘラ絞りのポイント

西垣金属工業の創業は、1924(大正13)年。金属加工一筋に80年の社歴を有する。現在では、ヘラ絞り、精密板金加工、プレス加工、機械加工の内製機能を有し、技術革新の進んだ金属加工のトータルメーカーとしての態勢を整えているが、そのコア技術としているのは"絞り"である。

 昭和10年代、創業社長が航空機関係に使われるアルミ製のシッピングキャップをヘラ絞りで加工して高い評価を得たのち、その取り組みは三代目である西垣 亮社長にまで受け継がれ、「西金式ヘラ絞り」として独自技術を確立するにいたっている。全国下請企業振興会が選定した「特別技術保有リスト」には京都で唯一1社選ばれた。

「私が目指すのは、"オンリーワン技術の確立"。ヘラ絞り技術を深化させ±0.2mmの精度を実現させるまでになっています。"この製品はどのような加工法でつくったのか"とお客様に尋ねられたときが技術の評価を最も実感できるときですね」(西垣 亮社長)

 今回の受賞製品もまたヘラ絞りによって製作されたもの。航空機のエンジン部分に取り付けられたヘッドカバーだ。初出品ながら受賞に結びついた。材質はジュラルミン。板厚2.0mm。精度±0.5mm。





(写真4)
(写真5)
写真4〜5  ヘッドカバーの内部(上)と外側
 

ルミ合金のジュラルミンは周知のように、強度が高く軽量という特性を持つ。航空機に多用される材料のひとつだ。しかし、ヘラ絞りにとってジュラルミンが"難敵"なのは、伸びが悪いこと。絞り込めば絞り込むほど組成分解を起こし、材質自体がより硬くなっていくからである。そうなると全く手の施しようがない。硬くなる前に素早く所定の形状にしていかなければならない。そこに"匠の技術"すなわち"高度な職人の手技"が活かされ、その伝承技術がある故に難加工材で異形の深絞り加工を可能としているのである。

 「絞り込んでいくと側面の板厚が薄くなっていきますが、強度が求められる先端部やフランジ部は、反対に板厚を2mmに保持しておかなければならない。フランジは板厚がないとネジ止めができないからです。厚みが必要な部分は元の板厚を保つなど、絞り込みの過程で板厚を自在に加減できることがポイントになるのです。絞り込めば板厚が薄くなるという当然のプロセスのなかで、当たり前でないものを当たり前のように加工するところにヘラ絞りの極意があるのです」(西垣社長)

 実加工時間は1個当たり20分。見た目の美しさと製品強度をともに実現するヘラ絞り技術の特性を活かして製作されたのが今回の受賞製品である。西垣金属工業の技術を集約して形状化されたものでもある。

  "技"と"勘"の職人技に頼るだけでなく、半自動、全自動スピンニングマシンの操作方法についても「作業手順書」としてマニュアル化を図っており、全社員が技術を習得できる対応を充実させているのも西垣金属工業の大きな特徴。熟練技術者の育成に努める同社の姿勢が"絞り"の技術を深化させ、さらに促進させていることがわかる。


西垣社長がこだわる言葉は"一流"。一流を目指すために、その顧客のほとんどは上場企業。しかも顧客の信頼を裏切らないために、1業種1社を頑なに守り続けている。現在は西垣社長が先頭に立ち、自社技術を活かした室内装飾の金属工芸品や照明器具などの分野にも進出。ヘラ絞り特有のスクラッチ状の模様を活かしたオリジナル製品などの開発にも力を入れている。




■西垣金属工業株式会社
本 社

京都市南区久世築山町377-6
久世工業団地内
TEL 075-921-6508

創業 1924(大正13)年3月
設立 1948(昭和23)年9月
代 表 者 西垣 亮
資 本 金 1000万円
社 員 数 28名
事業内容 医療機器・歯科用機器・航空機関連機器・半導体装置関連機器・食品関連機器・船舶用機器・インテリア関連機器などの絞り加工(ヘラ絞り・自動絞り)、精密鈑金加工、プレス加工、機械加工、組立加工
U R L http://www9.ocn.ne.jp/~nsgk
E-mail nsgk@isis.ocn.ne.jp

西垣 亮社長