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第16回優秀板金製品技能フェア優秀製品
造形を主眼とする組立品の部・金賞


『星』
北海冷暖工業株式会社(札幌市)

(写真1) 受賞製品は星とベースがバランスよく組み合わさっている。
 
 


(写真2)

(写真3)
均一な溶接がほどこされ、見栄えのいい仕上がりとなっている。

海冷暖工業の主業務は、ダクト、天蓋フード、防雪フード、パネルチャンバー、ガラリなど空調機器の製作である。いずれも切り板を溶接で組み合わせて複雑な形状をつくり出すものばかりだ。展開と溶接技術がポイントとなる。取り付け部に合わせて形状は一品一様、技術の習熟が必要である。そのために北村敏春社長がとった手法が造形品のミニチュアの製作を通して技能の向上をはかることであった。その場合あえてCADは使わないで展開はすべて手作業、ミニチュアだけに溶接もより高度の技術が要求されることになる。今回の受賞製品もそのような習作から生み出された。社員4名が同仕様で課題に取り組み、代表して星本体は本間慎二工場長、ベースその他は北村 智さんの製作したものが出品となった。

 受賞製品は角錐によって構成する星と、サッカーボールの上部を切り取った状態を模したベースの2つからなる。素材はともにSUS304、板厚は星が1.5mm、ベースが1.2mmだ。

 製作にあたって最大のポイントとなったのが展開である。北村智さんが担当した。星は4パーツで構成する部材を、図1のように4体作製し、それを組み合わせて最終形状にする展開手法をとった。


(写真4)

(写真5)
ベースは皿上のパーツを曲げたうえで、溶接・仕上げを行う
 

(図1)
 
 材の切り出しはすべてレーザー加工機で行っている。曲げの山側に浅いスリットを入れ、谷側に曲げ線のマーキングを入れており、曲げ位置がベンダーのV幅に満たない先端部分はあらかじめV幅以上に板を残し、曲げてから削る手法をとるなど工夫も多い。

 曲げは±1〜2′以内の精度におさめている。当然のことながら曲げ精度を追求しなければ4個のパーツをうまく組み合わせることができないためだ。そして次が開先取りである。角度はもちろん、接合部の隙間をなくし、溶接時のひずみを抑えるためにも重要だ。一方の開先角度が決まると対して片方はその1/2に開先を取るなど、高度の技量を要する作業となる。

「製品の成否を決めるのはやはり溶接です。組み合わせ面が多いだけに仮付けの位置と溶接順序がポイントになる。なかでも一番は仮付けの位置ですね。わずかなくるい(0.2〜0.3mm)もねじれの原因になってしまいます。熱影響によってどの方向が引っ張られるなどを見極める技量を持つことが大事で、必ず完成品をイメージしながら取り組んでいかなければうまくいきません」(北村社長)

 因みに星とベースの板厚の違いはひずみを考慮してのこと。星は全周溶接を行い、ベースは点溶接のためである。

 一方、ベースは内側・外側各11枚のパーツで構成されており、6角形と5角形の組み合わせとなる(図1)。皿状の各パーツをそれぞれ曲げたうえで、溶接・仕上げを行う(写真4、5)。両側を重ね合わせ、箱状になったものをつなぎあわせてベースの完成となるが、ポイントとなるのがやはり溶接。溶接個所の選定が重要となるからだ。仕上げがしやすいところで溶接することも考慮しなければならない。見えないところを点で、裏からへり溶接を行った。

 最後はベースの4箇所の開口部に星の足先端部をはめ込み、ビス止めする。星の先端部は尖って危険なため玉をつけた。これで完成である。

 同社の溶接技術は、ダクトの工事業からスタートした北村社長が加工にまで幅を広げるため独自に身につけたもの。創意工夫が多く、実践に裏打ちされたものだ。信条は「自分自身がお金を出ししてでもほしくなる製品を作れ」ということ。それでなくては顧客満足を満たすことはできないという考えだ。高い意識を持つ技能集団が北の大地に根づいている。



■北海冷暖工業株式会社
本 社

北海道札幌市東区東雁来3条1-1-43
TEL 011-782-5574

創業 1966(昭和41)年6月
設立 1974(昭和49)年5月
代 表 者 北村 敏春
資本金 1000万円
社 員 数 5名
事業内容 空調機器類(各種ダクト、天蓋フード、防雪フード、パネルチャンバー、点検口、エリミネーター、フィルターケース、ガラリ、風除板)の精密板金加工、レーザー加工、ステンレス製品加工
URL http://h-reidan.co.jp/
E-mail mail@h-reidan.co.jp

北村 敏春社長(右)と北村 智さん