潮社長・作のモニュメントである。潮社長が造形作家となり、製作の監理も行った。
過去、現在、未来という時間軸を貫く“刻の流れ”を、二つの箱型構造体(ボックス)と円筒との組み合わせで表象し、中空に目を当てると未来の先が見えることを、造形化したものだ。
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(写真2)平板を溶接し箱型構造としたため、直角部はエッジが立ち、すっきりした印象を与える。 |
シンプルな形状のなかに、製作のプロセスを知り尽くしているがゆえの“技術の妙味”が各所に組み込まれている。ステンレスのサッシ製作で培ったノウハウ、技術・技能を集大成して製作したところに注目したい。
台座、そして上部二つのボックスはそれぞれ6枚の平板を溶接して箱型構造とした。曲げ特有のふくらみがコーナー部にでることを避けるためである。エッジの立った直角部の形状がモニュメントをすっきりとまとめ、全体から受ける印象を鋭角にしている。
第2のポイントはモニュメントを構成する台座を含めた箱型3点とも表面に軽いR(アール)を付けていることである。上部2体はよりゆるやかな角度を描いているが、大径のRは高度な技術を必要とする。ロールで加工したものだ。側板とRの角度を合わせなければならないため、ロール曲げにあたっては角度出しにきめ細かい配慮が必要となる。両者のRの角度が一致しなければ、溶接時に矯正が必要となり、結果的に所要の構造を得ることが難しい。
溶接時の歪み対策も重要なポイントだ。4辺の全周溶接となるため、歪みの発生は避けられない。しかも溶接線が直線でなく、曲線になっているため歪みの発生も複雑かつ多岐にわたる。点溶接を打つ位置と順位が成否のすべてを決めるが、曲げ構造をとらず表面に大Rを付けた板材を張り合わせて、微妙な曲線をもつ箱型構造にしたことは、サッシ製作によって蓄積した技術を活用したものである。言いかえれば、高度なサッシ技術の保有を表現するためのモニュメント、ということもできる。
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(写真3,4)多様な表面仕上げを施している。ボックス表面は鏡面仕上げの上に線状にマスキングし、残りにヘアーラインをかけた。側板はきさげの跡に似たカール仕上げとしている |
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