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第17回優秀板金製品技能フェア優秀製品
学生作品の部金賞


『戦国甲冑・鷹』
ものつくり大学(埼玉県行田市)

”武の象徴”として位置づけられる鷹が甲冑を引き立てる役を担っている
 
17回のフェアから新たに設けられた「学生作品の部」。その栄えある最初の金賞に輝いた作品である。出品にあたっては過去の受賞製品を徹底研究。高い技術力を誇る企業製品に対して、見劣りしない作品をつくるための戦略が練られた。その答えが作品のアイデア、デザインであり、多数の部品を使用することで、作品の重厚さと迫力を醸し出すことができた。

 部品点数は甲冑・鷹ともに実に1500点にもおよぶ。この切断に威力を発揮したのがレーザ加工機。

「複雑な多種多様の部品を早く正確に切断できるレーザ加工機の特性を活かして、製作しました」と語るのは、甲冑を製作した製造技能工芸学科4回生の田島直道さん。レーザ加工機の高性能な加工が学生の技術力をカバーする形となった。

 製作は夏休みを返上してスタート。休み中は設計で、CAD図面を描くことに明け暮れた。そして休み明けにまずボール紙で試作をつくり、その後切断、曲げ等の加工に取り組み、最後の研磨を経て、ようやく完成。期間は3カ月を要した。

 曲げからはすべて手作業。なかでも特に苦労した点が最後の研磨工程という。当初は1点ずつ布と研磨剤で研磨していたが、これではいくら時間があっても足りないと、研磨機を自作して、作品の光沢を生み出していった。

「本当に丁寧に時間をかけてつくったので、ある程度自信がありました。受賞の知らせを聞いたときは正直ホッとしました」と田島さんは受賞の感想を語っている。
 ちなみに作品の材質(板厚)はSUS304(0.1・0.2・0.3mm)とSPC(0.6mm)である。

数多くの部品で構成されることにより、一層リアルな質感が実現した
ェアへの参加を学生に促したのは製造技能工芸学科の市川茂樹教授。同校は金賞以外にも銅賞・奨励賞も受賞している。

「学生にとっては本当に貴重な体験になりました。例えばレーザ加工では0.3mm以下の切断はさせていなかったのですが、今回自分たちの作品で薄板における歪みの感覚を体験するなど、テキストだけでは学べないことを理解できたようです。そして何よりも予算と時間を見積れる能力がつき、卒業研究に向けたよい勉強になりました。学生が一皮も二皮もむけた印象です」(市川教授)

 また板金への興味を引き出した効果も見受けられた。田島さんを手伝った同学科の内海篤士さんは、「街を歩いていても、いたるところにある板金製品が気になるようになりました。これはどういうふうに曲げているのかなど、思わず見入ってしまうことがあります」と語っている。

 今回の受賞により他の学生も触発され、フェアへの参加を希望する学生が増え、さらに学校側の支援も固まったという。

「フェアを通して学生が『板金はおもしろい』とモノづくりの楽しさを一層感じるようになりました。フェアは私たちが目指す実践的な教育につながっているので、これからも積極的に取り組んでいくつもりです」(市川教授)とフェアへの高い期待を寄せている。


■ものつくり大学
本  社

埼玉県行田市前谷333
TEL.048-564-3200

創  立 2001(平成13)年
学  長 野村 東太
学生数 1375名
URL http://www.iot.ac.jp
市川茂樹氏 田島 直道さん 内海篤士さん