IT活用インタビュー

2007/8
4〜5q離れた兄弟会社がVPNで
「すぐ隣の工場」感覚



株式会社共明製作所
代表取締役   山本 大二郎氏
住所   神奈川県相模原市田名4007-1
TEL   042-761-6528
創業   昭和44年
従業員数   30名

株式会社キョウメイ
代表取締役   山本 憲氏
住所   神奈川県相模原市田名3138-1
TEL   042-761-3906
創業   平成6年
従業員数   15名
 (株)キョウメイの山本憲社長が兄、(株)共明製作所の山本大二郎社長が弟の男兄弟である。創業は両社長の父山本美智雄会長が昭和44年に三菱自動車工業の一次協力会社として創業、昭和46年に三菱重工業が相模原に工場を建設、両社から仕事を受注していく内に両者からの受注バランスが少しずつ変わっていき、今では100%が三菱重工相模原製作所仕事で占められるようになっている。

  「受注の内容は自家発電機のエンジンのパーツ及びカバー関係が70%で、残りの30%はフォークリフトや建設機械、その他防衛庁がらみの特殊車両のパーツ等です。当社は少量生産が得意ですから量産を除いたロット1〜2個、多くても50個ほどの製品です。形状としては、手のひらに乗るような小さなものから2〜3mの大きなもので、板厚も2〜3mm程の薄板から6mm前後の中板まで受注しており仕事の種類は豊富です」。

 2社で得意部門を担当
 「キョウメイが設立された経緯は、15〜16年前に三菱重工さんから受注する発電機関係の仕事の中で、発電機の入るボックス、ケース、関係者の間ではボンネットといっている2.3〜3.2mmtの製品のボリュームがかなりありました。共明製作所は中・厚板の加工を得意とする会社で、その頃は、それらの薄板の仕事は外注に出していました。しかし、12〜13年前にその製品が生産ラインごと、ある協力会社へ移管されることになり、そうなるとやはり、価格、納期に関してもなかなか思うようにならないということで内製化を考えるようになりました。そのためには、その生産に対応できるもっと大きな工場が必要だ、ということになり、新たに土地を購入して工場を建設、アマダ製レーザ加工機FO-2412NT+ASR、VIPROS-357+NCMP-1224などを導入して株式会社キヨウメイを創業、兄が社長でスタートしました」。山本大二郎社長は、キヨウメイを設立するに至ったいきさつを語る。

 「共明製作所とキョウメイの役割分担として、三菱重工さんからの受注処理は共明製作所が行います。当社ではオフコンで管理する生産管理を早くから導入し、運用していました。20数年前にオフコンを買って、手入力でしたが生産管理をコンピュータで行うということに着目していました。現在は受注処理をすると受注した仕事の振り分けも共明製作所で行います。設備も共明製作所とキョウメイとで分かれていますから、工数負荷を考えて工程設計を行います。展開、抜き(レーザ)、切断、曲げまでの上流の工程をキョウメイが担当。溶接、塗装、組立、検査等の下流の工程を共明製作所が、板厚が4mm以下の薄板は溶接、組立までをキョウメイで担当することで、工程を振り分けています」。

 3〜4000点の納品書の処理に悲鳴

▲新規は図面付きの制作指示書

▲図面はすべてスキャナーで画像モジュールにて一括管理

▲VPNで立体姿図付きの製作指示書がキョウメイのプリンターに出力される

▲VPNにてPCLとつながっている10段パレットチェンジャー付きFO-2412NT
  「受注は、最初に三菱重工さんの生産計画に従って6カ月前に内示を受けます。これはあくまでも内示であって確定するまでは納期も個数も毎月変化します。これらの受注が確定するのは約2間前の金曜日で、それらは全て電子情報(EDI)で入ってきます。金曜日に確定発注という形になっていますが、以前は毎月1回の受注でした。月に1回の発注書では、生産計画も30日となり製造のプロデュース担当の共明製作所にも少々余裕があったのですが、それが2週間に1回に変わり、最近は毎週となると全く余裕がなくなるどころか自社の現場からもキョウメイからも早く指示書を出すように請求される始末です。ですから金曜日の午後に1000点以上の受注をすると、すぐに受注内容を把握して内示と比較して、すでに生産指示が出ているのか、生産準備の段階なのか、パーツとしての状態なのか、製品としての状態なのか、まだ着手していないのか、等々の現在の状況の把握を行います。生産計画を立て各会社に振り分け指示書を作成すると、金曜日当日と休日である土曜の真夜中までかかって2日間で悪戦苦闘の末、日曜日の夕方にやっとできて月曜の朝、各現場に指示書を手渡す、といった大変ハードなスケジュールでした。 そのような状態が毎週末に繰り返され、それは大変神経を使う業務でした。そんな時にケーブルソフトウエア社と知り合い切実な悲鳴を聞いてもらいました」。ケーブルソフトウエア社の担当者は板金業務に精通しているだけに、当社のやり方の大変さを理解してくれ、悪戦苦闘して作成する手作業の大部分をコンピュータに手助けしてもらうようなソフトを提案していただきました。そこで共明製作所の山本社長とケーブルソフトウエア社の担当者で現状の作業分析が始まり、できたのが今の受注処理システム。

 「確定受注として三菱重工さんからEDI (電子受注)でインターネットを介して送られてくると自社の生産管理ソフト(ケーブルソフトウエア社製の『受注・出荷モジュール+M』)で自動受注入力されます。入力された情報は自動で内示と整合性を図り、各製品及びパーツの現状をチェックし各パーツの必要な生産数量を計算します。その結果を見て今後の生産計画を組み、指示書をプリントアウトすると共明製作所へ出すものは、すぐ横のプリンターへ、そしてキョウメイへ出すものはインターネットを利用した専用線VPN(Virtual Private Network)」を介して送られプリンターへ打ち出されます。両社をVPNネットワークで繋げてどちらでもAP100の画面や『受注・出荷モジュール+M』の画面が見られるようになっています。これによってこれまで20〜30時間掛かっていた差し立て処理が7〜8時間でできるようになった上、両社を人が行ったり来たりすることがなくなりました。それのよって約2/3の工数削減ができました。また、新規受注においては、受注情報にプラスして技術情報であるところの図面がある訳ですが、図面は確定受注が電子受注で送られてきてから新規受注分のみ2〜3日遅れで配布されてきます。当社は図面に関しても図面管理ソフト(ケーブルソフトウエア社の画像データーモジュール)の中にスキャナーにより全て記録しています。そして『受注・出荷モジュール+M』と完全にリンクされていてリピートは勿論のこと新規においても指示書と同時に製作図面も一緒にプリントアウトされます。勿論、キョウメイに打ち出す場合でもサーバーは共明製作所にありますが、インターネットを利用した専用線VPNによって図面もいっしょに出されます。間違っていないか、間に合うだろうか、など神経をすり減らしていた業務が、これだけ時間短縮になり、納期対応が完璧になりました。なにより精神衛生上、晴れ晴れとした気分で業務が遂行できます。これも皆、インターネットのお陰です」。

 ホームページを活用して
 「当社のホームページについては、今のところ取引先を増やすことを考えてこなかったので作っていませんでしたが、最近はリクルートの場合においても、若い方たちは職探しは勿論のこと、この会社はどんな会社かな?という時などはすぐにホームページを利用する様です。言ってみればホームページは「パソコンさえあれば、どこででも見られる“会社の看板”」ですからその重要さ、簡便さ、有効性を見直して、当社もホームページを作成しようかと考えているところです」。


 まだまだ便利になるツール

▲NT以外のVIPROS-367は機械端末を介してPCLとつながる

▲整然と並べられた部品
 「また、工場内にネットワークを導入するのは当たり前になりました。重工さんからは受注情報に関してはインターネットを活用したEDIで送られてきますが今後は図面等の技術情報もインターネットを介して送られてくるのは勿論、モノづくりの全ての打ち合わせがADのプラットホームやテレビ会議で打ち合わせをするようになって、グループ会社同士の打ち合わせも居ながらにして実行できるようになるでしょう。『受注・出荷モジュール+M』やVPNネットワークの便利さを実感していますので、これからも時代に乗り遅れないように、アマダさんには適宜、最適な提案をお願いしたいところです」。山本大二郎社長は将来への要望を述べていた。

 
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