IT活用インタビュー
 
4月に「標茶(しべちゃ)CADセンター」を
オープン、CAD工程をいっそう強化

写真上:「標茶CADセンター」完成予想図
左下:浦安本社・工場  右下:千葉営業所・八街工場


株式会社インスメタル
本社住所   千葉県浦安市鉄鋼通り1-7-1
八街工場   千葉県八街市沖551
TEL   047-355-6511
創業   1962 年
従業員数   70 名
代表取締役   福井英人
専務取締役   福井啓二
URL   http://www.insmetal.co.jp/


▲福井賢会長(右)と福井英人社長(左)

▲福井啓二専務
 1962年に鋼材加工業者としてスタートした同社は、1985年のCO2レーザマシン導入以来、板金加工をはじめ、多彩な加工能力を持つレーザジョブショップとして着実に地歩を固めてきた。今回は、浦安の本社に福井賢会長と福井英人社長を、八街工場に福井啓二専務を訪ね、鋼材加工業者としての業務を継続しながら、ITを駆使して多品種少量生産に徹底対応してきた同社の取り組みを紹介する。

 同社は1962年10月、東京都墨田区で現会長である福井賢氏が福井シャーリングを創業。1967年12月に福井シャーリング(株)に株式改組。1985年4月にはCO2レーザマシンを業界に先駆けて導入、鋼板の精密切断を開始した。1992年、創業30周年の記念事業として社名を現在の(株)インスメタルに変更、1993年にはレーザ切断専門工場を目指して千葉県八街市沖に千葉営業所・八街工場を建設した。1999年11月には本社・工場を現在の浦安市内に移転、2003年4月には神奈川県厚木市に神奈川営業所を開設した。

 現在は鋼材加工業者として各種鋼板の切断加工・販売を行う一方、八街工場には3次元レーザマシンを備え、大型ダクト、建築関係の構造物、大径の丸パイプ、コラム、角パイプ、昇降機用部品、角丸ホッパーといった製品の加工を行っている。

 多品種少量−儲からない仕事を儲かる仕事に

▲昨年11月に導入したレーザマシンLC-3015F1NT+AS-3015F1
 同社の得意先は95%が関東圏、登録社数は1,000社前後、毎月650社前後から鋼材切断を受注している。受注形態はFAXが多く、直接営業が図面をもらってくるケースも含めて8割方は図面で受注する。大手に依存していないので、ADデータによるEDI受注はほとんどない。インターネット経由も増えてはいるが、手書きのまんがや電話で発注してくるような小規模な得意先も多い。リピート率は10%未満となっており、ほとんどが単発。極端な多品種少量生産体制だ。

 「はじめから細かい仕事を目指していたわけではありません。7〜8年前までは、本当は大きい仕事がほしかった。でも受注できませんでした。当時は大手が入り込んできていて、当社には設備もなかったし、場所もなかった。仕事量を確保しようとすると、自然と歩留り率の悪い細かい仕事ばかりがたくさん集まってしまいました。当然、儲かりません。
それを、ITを駆使して儲かるようにしていきました。まとまった仕事も必要ですが、そういう儲からないモノ、小さいモノ、難しいモノをインスメタルにお任せください、というスタイルで仕事をかき集めました。儲からない仕事に儲かる仕組みを導入して、うまく使いこなす。それが現在の当社のスタイルとなり、利益を生み出しています」と福井英人社長は語る。

 「多品種少量生産の大きなメリットとして、値段を下げられにくいという点があります」と福井賢会長は語る。「ロットの大きい仕事やリピート品はすぐに発注元からコストダウンを要請されますが、多品種少量生産の場合は納期さえ守れば値段を下げろとはなかなか言われない。ですから当社の場合、標準価格以下に値切られるケースはほとんどありません」。このように同社では、加工業者への負担にばかり目が行きがちな多品種少量生産に、高付加価値というメリットを見出している。

 2000年の転機、「WILL受注・出荷モジュール+M」を導入
  儲からない仕事を儲かる仕事に。その転機となったのは2000年、ケーブルソフトウェア社製の生産管理システム「WILL受注・出荷モジュール+M」の導入だった。

 2000年まで、同社の伝票はすべて手書きだった。営業も、事務所内での手作業が多くて外回りができない。事務処理をもっと合理化できないかと考え、WILLを導入した。

 「最大の課題は見積りでした」と福井啓二専務は語る。「WILLは板金加工を前提にしていますが、当社には鋼材加工業者という側面もあり、材料の販売や流通の中間加工もやっています。WILLは加工賃をキロ単価で計算する鋼材加工業務の見積りには対応していませんでしたが、なんとか当社仕様にカスタマイズしてもらうことができました」。

 「当時の見積りは、担当者の勘に頼っている部分が大きかったので、社員間の共有や引き継ぎが難しい。それを数値化して統一した係数で管理できるようにしたかったのです」(福井社長)。

 2003年のISO 9001:2000取得も情報化を後押しした。ISOを取得するには、品質やトレーサビリティの管理手法を確立する必要がある。クレームも減らしたかった。規模が大きくなり、社員も増え、1日に数百点を流しているので、ヒトの手による管理には限界があった。こうして見積りの仕組みができるとWILLの活用範囲を拡げ、受注・発注の管理、バーコード付きの作業指示書の発行、バーコードを読み込んで吸い上げる進捗の管理、経理システムとの連携と、ひとつひとつ実現していった。

 3事業所をVPNでネットワーク化

▲本社事務所に設置されたマシン稼働管理システムvFactory の画面
 昨年12月までは、3事業所(浦安本社、八街工場、神奈川営業所)のうち、本社と八街工場の2事業所に別個でWILLを導入し、生産管理を行っていた。しかし、今年1月から3事業所すべてをVPNでネットワーク化。これによりサーバーを本社に統合し、情報の一元化を実現した。3事業所それぞれの顧客情報、受注情報、出荷および売上情報まで共有し、間接工程の重複処理をなくすことで、事務処理のさらなる合理化を果たした。

 「離れた事業所をVPNでつなぐ計画はWILLを導入した当初からありました。しかしすべてを一度にはできませんから、見積りから始めて、ひとつずつ実現していきました。これまでは事業所同士で電話やFAXで問い合わせたり、顧客情報が更新されるたびに連絡を取り合ってデータの同期を図ったりしていましたが、一元化によってそうした手間がなくなりました」。

 次の課題はマシン稼働管理システムvFactoryとWILLとの連携。vFactory単体でもマシンの稼働状況や機械特性の“見える化”には貢献している。しかし福井社長は、vFactoryの利用価値は単なる稼働状況の確認に留まらず、WILLと連携させ、マシン側から自動的に進捗を吸い上げ、生産管理を合理化できる点にあると考えている。

 CAD工程の強化を推進

▲2006 年に導入したベンディングマシンHDS-2203NT

▲2003 年に導入したレーザマシンFO-3015NT+AS-3015FO
 同社のリピート率は10%未満。9割を占める新規品すべてのプログラムを作成しなければならない。

 「当社にはLC-3015F1NT+AS-3015F1( 本社工場) やFO-3015NT+AS-3015FO(同)をはじめ、本社工場と八街工場、合わせて8台のレーザマシンがありますが、新しくなるに連れて加工スピードはどんどん向上しています。昨年11月に導入したLC-3015F1NTもとにかく速くて、加工がすぐに終わってしまい、プログラムが追い付きません。大量の仕事をこなすにはCADによるプログラム工程を強化する必要があります。3年くらい前から少しずつCADの人数を増やしており、現在14名、最終的には20名くらいにしたいと考えています」と福井社長は語る。

 「標茶(しべちゃ)CADセンター」設立計画


▲八街工場の3 階に隔離した「仮設 標茶(しべちゃ)CAD センター」

 CAD工程の強化の一環として、同社は今年4月、北海道の標茶町に「標茶CADセンター」を設立する。同センターは工場や営業所としての機能は持たず、CADによるプログラム工程のみを専門に担当する。標茶町という土地は知人に紹介してもらい、リサーチを進めた結果、企業誘致を検討していた標茶町役場の全面的な協力を得ることができた。昨年4月には地元の標茶高校の新卒者3名を優先的に紹介してもらい、一般転職のリーダーと合わせて開所直後は4人体制となる予定。4人は昨年4月の入社から浦安本社、八街工場それぞれのCADルームで3カ月ずつ研修を受け、その後は八街工場の3階に設置した「仮設 標茶CADセンター」に隔離。本社や八街との業務上の指示・連絡・報告・相談はすべてインターネットか電話を介して行うという条件下でシミュレーションを実施している。

 営業ツールとしての3次元CADに意欲

▲本社工場のCADルーム
 「CAD工程を強化するのは、ただ機械を動かすことだけが目的ではありません」と福井社長は語る。「2次元の組図で来たものを3次元でモデリング、その立体モデルに基づいてバラし、展開まで行います。このようにして3次元CADで作成した加工提案を持って行くと、お客さまにとても喜ばれます。モノをつくる段階でイメージが湧きやすいし、確認もしやすい。もちろん、最終的には加工の仕事もいただきます。これからは営業ツールとしての3次元CADを推進していきたい」と福井社長は今後の計画に飽くことのない意欲を見せた。

 
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