IT活用インタビュー | |
設計部門の3次元化を強化 − 「設計・製造コラボレーション」で発注元との緻密な連携を実現− |
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3次元ソリッド板金CAD SheetWorksを操作する田中智隆さん |
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他社に先駆けてIT化を促進 | ||||||
田中幸雄社長は1990年頃から、これからはコンピュータを利用したモノづくりが主流になると判断し、同業他社に先駆けてIT化に取り組んできた慧眼の持ち主。板金加工に必要なマシンはすべてアマダマシンでそろえられ、上流のプログラム工程にもアマダ製の2次元CAD/CAM
AP100や板金加工ネットワークシステムASIS100PCLを導入し、事務所と現場のマシンを現場端末PEU/Winでネットワーク化することに取り組んできた。インターネットが普及した直後(今から10年以上前)にはwebカメラを導入し、外出先などの遠隔地からでもPCや携帯端末から稼働状況を把握できる仕組みも構築した。 「受発注管理、生産管理、NC設備機器のデータ管理、工場内の動きなどをリアルタイムで把握でき、かつ携帯端末により外部からのアクセスも可能なモニタリングによる管理システムを構築したことで、高品位なモノづくりができるようになりました」と田中社長はIT化による成果を語っている。そして「当社のような小規模な工場の利点は、つくる工程から、作業中も社員全員に目が行き届くことです」と語る田中社長は、自らプログラムから受発注・生産管理・品質管理にいたるすべてを管理する。 「会社がある程度の規模に育つと、品質を保つための管理がだんだんと難しくなってしまいます。当社くらいの規模と設備で生き残るためには高精度なモノづくりでお客さまの信用を勝ち取るしかありません。お客さまの信用を得るためには職人の熟練した技術力だけでなく、社内管理の徹底により高品質を保つことが重要です」と、広い敷地を確保できない都会のアーバン(都市型)工場を代表する経営者として、品質の重要性を強調する。 |
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立体運用の徹底 | ||||||
AP100の立体姿図運用の効果をよく理解していた田中社長は、3次元ソリッド板金CAD
SheetWorksとSolidWorks を導入。VPSS(Virtual Prototype Simulation System:バーチャル試作システム)を活用することで設計提案を行ってきた自身の経験から、3次元モデルの有用性を痛感していた。2次元データを3次元化して製品モデルを作成し、その3次元モデルを自動展開することでさらに間違いのない製品づくりを行うとともに、3次元モデルを設計提案に活用することまで考えた。 設計込みで受注した製品はSolidWorksで設計を行い、完成した3次元の設計図からSheetWorksで展開を行う。発注元から送られてくる製品の3次元ソリッドモデルは、SheetWorksで板金部品を抽出し、バラシ、展開を行う。さらには、2次元のDXFデータを3次元化してから組図検証・展開図検証を行い、アッシー図を作成して、現場の作業者への支援情報に役立てている。 2005年には曲げ加工データ作成全自動CAM Dr.ABE_Bendを導入し、曲げ加工データの自動作成と、立体姿図による曲げシミュレーションにも対応。作成した展開図・曲げ加工データはASIS100PCLサーバー(SDD)に記録し、データの2度づくりを防止するとともに、曲げ不良を低減するなど、リピート品への迅速な対応を実現している。
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上流工程で仕事を確保 | ||||||
「これからは安くて早ければ良い、というものではありません」と智隆さんは語る。「設備が同じで、品質・納期も変わらなければ、コスト競争力のある大規模な工場や、人件費の安い海外の工場へ仕事は流れていくのは当たり前です。そこで、当社の ような小規模な工場が仕事を取っていくにはどうしたら良いのか。私は、設計・試作、さらには商品企画といった上流で仕事を確保し、他社では生産できない仕組みをつくることだと考えています。もちろん設備力は加工能力に直結しますから最新の設備を導入しなければならない場面はありますが、先を見越して導入していかなければなりません。こんな風に考えられるのも、父である田中社長が業界内で先陣を切ってIT化に取り組み、ネットワークを組んで、加工マシンを導入しているからです。私は場所と設備がある状態からスタートしていますので、恵まれた環境に感謝するとともに、これらを活かしていくのが私の役割だと考えています」。モノづくりとは程遠い職種からの転身だったが、父親の辿ってきた道筋をきっちりと評価している。 |
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「設計・製造コラボレーション」を導入 | ||||||
これは、設計・試作から請け負うサプライヤーを対象としたコミュニケーションツールで、アマダアイリンクサービスが提供する「Webホットライン」を使用して、発注元の担当者にAP100の立体姿図やSheetWorksの3次元ソリッドモデル、Dr.ABE_Bendの曲げ加工シミュレーションをリアルタイムに提示するというもの。バーチャル試作による製造性の検証結果をリアルタイムで確認することで、その場で製造性に対する結論を出すことができる。 設計・試作から請け負う場合、発注元が設計意図や機能をサプライヤーである板金加工業者に伝え、サプライヤーは仕様を満足させたうえで製品化の検討を行うため、発注元とサプライヤーの間で行う確認事項が増加し、それとともに打ち合わせ回数も増える。このサービスは、こうした確認・打ち合わせの工数を削減し、時間を短縮するとともに、設計・試作工程の整流化に貢献する。 |
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「設計・製造コラボレーション」の導入効果入 | ||||||
「導入してまだ1カ月なので、効果はまだはっきりしません。しかし、こういうツールは今後、必要になっていきます」と智隆さんは語っている。「SolidWorksやSheetWorksといった3次元CADは、生産と営業の両方に貢献するソフトだと考えています。3次元CADが貢献する比率を5対5とすると、この『設計・製造コラボレーション』は2対8で営業面に効果があると期待しています。当社で設計して、外観図を3次元モデルで作成し、デザインや加工可否の打ち合わせをする、といった使い方が適していると思います。当社のように小規模で、専任の営業部門がいない会社では、設計・加工・納品の各担当者が営業も兼任することになります。そうすると発注元と打ち合わせを重ねるたびに発生する工数が社内の生産性低下にもつながりかねません。設計・試作工程に限らず、お客さまから頂戴した図面に対して、設計・仕様・工法の変更によるVA/VE提案を行う際のツールとしても役立ちます。当社の意図を、すぐに、明確に、わかりやすく伝えることができる。さらに、営業ツールとして考えた場合、パフォーマンスの効果も無視できません。SolidWorksやSheetWorksを導入した時にもお客さまからは驚かれましたが、今回のサービスにも同じような効果を期待しています」 |
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営業ツールとして役立てる | ||||||
「現在、私が最も重要視しているのは営業力と提案力。当社に足りないものです」と智隆さんは謙遜する。「現在取り組んでいるSolidWorksやSheetWorksといった3次元CADも、いずれは業界全体に普及します。設備はほとんど横並びですから、そこでさらに差別化を図るとすると、重要なのは営業力・提案力だと思います。『設計・製造コラボレーション』は、仕事を受注するために役立つツールです。ネットワーク化された設備により、確実なデータを元に、私達は間違いのない製品を安定して加工することができます」と、田中智隆さんは将来を担う風格をにじませた。 | ||||||
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