IT活用インタビュー
 
発注元の設計者と二人三脚

− 主業の“試作”にSheetWorksが活躍 −
ネットワーク対応型べンディングマシンHDS-5020NTが2台並ぶ
株式会社トライアン相互
代表取締役

徳田桂二

住所 長野県塩尻市広丘郷原1010-1
TEL 0263-53-2350
創業 1965年
従業員数 20名
URL http://www.t-sougo.co.jp/
業種 プリンター・複写機・オーディオ機器・農業機械・半導体製造装置関連機器・実装機などの精密板金試作品および少量・量産品の製造、プレス完成品への追加工
   
会社経歴 1965年、叔父であり創業者である浅野章氏が(株)相互プレス工業所を設立。農機具の多品種少量生産を得意とするプレス加工業者としてスタートした。1989年に現在地 へ移転する際に、社名を(株)トライアン相互に変更。2004年、2代目社長として徳田桂二氏が就任した。2007年にISO9001を、2004年にISO14001を認証取得。

主要設備
パンチ・レーザ複合マシン αパンチ、レーザマシン3台、ベンディングマシン HDS-5020NT×2台、FMB-3613NT×2台など計8台、ワイヤ加工機1台、2次元CAD/CAM AP100、曲げ加工データ作成全自動CAM Dr.ABE_Bend、 3次元ソリッド板金CAD SheetWorks、生産管理システムWILL受注・出荷モジュール+M
 

▲株式会社トライアン相互 会社外観
 「当社はおそらく、板金の王道を行く会社ではないのだと思います」と徳田社長は語る。

同社は1965年、農機具のプレス加工業者、(株)相互プレス工業所として創業。創業当初は農機具の全盛期で、順調に仕事が出ていたが、時代の変遷とともに徐々に衰退。小ロット化が進むとともに、多品種少量生産へと舵を切らざるを得なくなった。同社はこの流れに対応していち早くロボット付きのプレスマシンを導入した他、25年以上も前にレーザマシンを導入し、“試作から量産まで幅広い仕事をやる”と方針転換。そこから業容が拡大し、現在では“板金加工によるプレス製品の試作”をメインとしている。

 「トライアン相互という現在の社名には、『トライ(試作)を通して社会に貢献したい』、『当社もお客さまもお互いに繁栄していかなくてはならない』という先代(浅野章氏)の思いが込められています」。2004年に2代目社長に就任した徳田社長はこのように語っている。

 売上の約50%を試作が占める

▲徳田桂二社長
 OA関連機器、IT関連機器の開発に携わる試作が売上の約50%を占める。同社が手掛ける試作は、量産化された際に、板金加工ではなくプレス加工により生産されるものを主眼としている。

 残りの50%は、製造装置関係の部品が多く、ロットは月に5〜10台、多くても30台。月間の受注品目数は、1,200〜1,300点だが、ピーク時は2,000点を超えていた。そのうち70%が新規品で、残りの30%がリピート品となっている。取引社数は約150社。そのうち50社くらいからは毎月試作の仕事を受注している。

 「当社は単品から、多くてもロット数百個を主なターゲットとしてやってきました。この業容を成立させるためには、とにかくお客さまの間口を広げなければならない、と考えています」。

 ネットワークとWILLの性能に衝撃

▲受注情報は手打ちでWILL受注・出荷モジュール+Mに入力
 同社が生産体制のIT化、ネットワーク化に本格的に取り組んだのは1997年頃だった。

 「当社はCADの導入が非常に遅かった。1997年頃になってようやくCADを導入することになり、必然的にネットワークを組むことになりました」。

 その当時、設計のCAD化とともに徳田社長の頭を悩ませていたのが、生産管理のシステム化だった。それまでは、事務所の女性社員が受注台帳(ノート)に手書きで受注情報を記録し、出荷するたびに消し込んでいた。IT化を進めたいものの、当時はまだ生産管理システムは非常に高価というイメージがあったため、このままではいけないという思いを抱きながらも導入には踏み切れずにいた。そんな時に、アマダの営業マンからケーブルソフトウェア社の生産管理システムWILL受注・出荷モジュール+Mの紹介を受けた。

 「安価なパッケージ製品でありながら板金企業に必要な機能をほとんど備えていることに衝撃を受けました」と徳田社長は振り返っている。

 曲げ工程までネットワーク化

▲全国でも珍しいαレーザーにパンチを6セット装着したαパンチ

▲精密装置の試作が多いため厳しい精密加工が要求される
 2000年にWILLを導入した同社は、その後、事務所と工場をネットワーク化、IT導入を推進していった。

2004年にはネットワーク対応型ベンディングマシンHDS-5020NTを2台、2005年にFMB-3613NTを2台、導入した。

 「同じ仕様で2台をセットで導入したのは、アマダのネットワーク化という考えに共鳴した結果です。2台あれば、1人が段取りしてもう1人に転送できる。忙しい時には2台で並行して同じ加工を行うこともできる。ネットワークをフルに活用するなら1台ではなく2台セットで導入すべきだと考えました」。

 SheetWorksの導入により3次元に対応
▲製品の3次元モデルと、それを基に製作された製品
 得意先からの要望により、受けCADとして得意先と同じ汎用3次元CADを導入したが、板金属性を備え、さらに高精度な展開が可能なSheetWorksを2004年に導入した。

 「アマダの営業マンに当時の課題だった3次元CADのことを相談すると、SheetWorksなら展開までできると紹介されました。テストを依頼すると、『この形状では、自動展開は無理だろう』と思っていたデータも全部スムーズに展開でき、驚きました」。

 開発・試作に適した3次元CAD
▲高精度の精密加工に不可欠な3次元測定器。
作業者全員が使用できるよう教育されている
 現在、3次元データを提供してくれる得意先は4〜5社。受け取る図面の比率は、3次元データが40%前後、残りはDXFや紙図面、FAXで受け取っている。

「3次元CADのデータには公差などの詳細情報が入っていないため、それだけでは運用できません。OA関連機器・IT関連機器の試作という仕事柄、精度を要求される製品が多いため、公差の情報は不可欠。したがってデータとは別に公差などを記入した紙図面も必要となり、営業や納品の際に受け取ったり、郵送やFAXで送ってもらったりして、取りあえずデータどおりに展開して公差などを確認し、修正が必要な場合は修正して正しい展開図データを作成しています」。

「3次元データが送られてくる際に『こういう製品の加工ができるか』 といった要望を伝えられます。それを受けて、社内で検討し、『こういう工法ならできます』といった提案をします。また、発注元の設計者から事前に3次元データが送られてき て、『こういう形状で製品ができるでしょうか』と相談を受けることもよくあります。現在では、見積りの段階からお客さまが3次元データを 送ってきて、『すぐに見積ってくれ』と言われるケースも増えています。 単純に受けCADとしてだけでなく、発注元の設計者とのコラボレーション環境を構築し、二人三脚で開発・試作を進めていくための提案ツー ル、営業ツールとして活躍してくれています」。

 加工編集会議で3次元モデルを活用
 同社の試作品は、手のかかるもの、多工程を渡り歩くものが多いため、発注元から3次元データを受け取った段階で、現場の加工担当者を集め、どういう方法で加工していけば良いか、加工編集会議を行っている。

 「会議では、3次元モデルをグルグルまわしながら、加工に無理がある部分、手のかかる部分を1つひとつ潰していきます。そうして簡易型の構造・形状と部品形状、工程順、加工順序などを決めていき、展開形状が決まり、それから初めて展開を行うという流れになります。紙図面やDXFなどの2次元データでは製品のイメージをつかむことができませんので、SheetWorksは今や、試作に欠かせないツールとなっています」と徳田社長は語っている。

 新しい技術・工法を生み出す

▲同社のレーザ加工・ワイヤ加工技術により完成したセイコー社製最高級置き時計「悠久」。
第21回優秀板金製品技能フェアで銅賞を受賞
 「お客さまは、常に新しいことを盛り込みたいという要望を持っています。バーリングひとつ取って見ても、ただ円筒状にストレッチ、フラ ンジングを付けるだけの加工ではなく、『C面取りを入れて、なおかつ潰しを入れたい』といった要望を出してきます。お客さまが新たに取り組みたいと考えている加工技術に、知 識と経験をフルに活用して取り組むのは、やりがいのある仕事です。『どうやったらできるだろう』と寝る前までずっと考えていることもよくありますが、引き受けてできなかった ためしはありません。当社は担当者レベルまで含めて、3次元モデルを見た時に、モノができるかできないかイメージでつかめるレベルに到達しています。そこから新しい技術や 加工方法が生まれていく。試作は経験の積み重ねです。いろいろな経験を積み、引き出しをいかにたくさんつくれるかに懸かっています。仕事はあっても、すべてを請け負うこと はできない、それなら一番難しいものに挑戦します。当社は売上を伸ばしながら、将来のための技術を蓄積することで、他社との差別化を図っていきたい」と語る徳田社長。試作 を主業とする同社の今後が期待される。

 
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