IT活用インタビュー | |
総勢10名、不況下でも増収 − ネットワーク化とレーザマシンにより売上が約1.5倍に − |
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ネットワーク化にかける思い | |||
「当時はAP100とPEU/Winを導入し、工場と事務所のネットワークを構築したばかりで、漠然とですがITが今後重要な要素になるだろうという認識は持っていました。しかし、工場見学で最先端のネットワーク設備を活用している同業者の工場を目の当たりにして、『うちはこの会社より10年遅れている』と衝撃を受けました。その時に抱いた『悔しい』、『負けたくない』という思いが、ネットワーク化を推進する原動力になりました」。 その直後、東野社長はベンディングマシンFBDV-1253NTを導入し、プログラム・抜き・曲げの各工程をネットワークで繋いだ。事務所のAP100で展開図と立体姿図を作成し、ブランク工程のVIPROS、曲げ工程のFBDV-NTがそれぞれネットワーク経由で加工データや立体姿図を呼び出し、加工する。実際に運用してみて「これは使える」と手応えを感じ、ネットワーク化を加速していった。 「効率がまったく違います。人の行き来が減り、モノやデータを探す手間も減り、正確に情報が伝達されるようになりました。やるからには徹底してやる。工場設備はすべてネットワーク化し、曲げ加工データも初回に必ず作成する。それまでは発注元から送られてきた紙図面に卍を描いて曲げ寸法、内寸などを書き込み、現場に流していましたが、ネットワークを構築してからはAP100で作成した展開図、立体姿図を現場から呼び出して利用しています。当社では現在、月間1,200〜1,500件のプログラムを作成、AP100導入以来の8年間でプログラム数は累計12万件になりますが、立体姿図・曲げ加工データのないものは1件もありません」。 |
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レーザマシンの導入により業容が拡大 | |||
「元来、当社にはレーザ加工が必要な仕事は1件もありませんでしたが、2007年末にLC-2415αWNTを導入したことで、狙い通り、業容が拡がっていきました。イベントやコンサートなどに使う特殊機材や業務用のホースリール、発光体の特殊液体タンク、シャンパンタワーのような装飾品、最近多いのは、取っ手のような内外装関係のちょっとした部材といった細かい製品の仕事。板金加工とは無縁のお客さまから、口頭で大まかな仕様だけ聞いて、当社で機能・構造を勘案しながら設計するというケースもあります。量産品はほとんどなく、すべて単品の新規品。手間がかかるわりには、案件ごとの売上は微々たるものです。しかし、機能の要件から仕様を固めて設計していく過程や、自由度の高いレーザ加工だからこそできる自分たちのアイデアを盛り込んでいく仕事は、良い経験になります。こういう経験を1つひとつ積み重ね、お客さまを10社、20社と増やしていき、メインのお客さまに迷惑をかけないように仕事を伸ばしていく。以前は規模の大きな仕事にこだわっているところがありましたが、現在では考え方を変えて、価格は1万円でも2万円でもいい、当社まで引き取りに来てもらえるなら即対応するといった姿勢で取り組むことで、仕事が増えていきました」。 |
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不況下でもプラス成長 | |||
2006/2007年、2007/2008年と売上は目減り傾向だったが、レーザマシンの導入と業容の拡がりにより、2008/2009年には後半のリーマンショックの景気への影響があったにも関わらず、売上はピーク時と同等にまで持ち直している。 「当社は、人よりも機械の方が多い小さな会社。人数が少ないと、こういった不況には強い」と東野社長が語るように、同社のスタッフは経営者や事務のスタッフを含めて10名。 「若いスタッフが多く、吸収も早い。よく勉強しているし、全員が多能工です。それぞれ担当は持っていますが、負荷の大きい工程は全員でサポートし合っています」。 多能工化により社員全員で負荷の平準化に努めるという小人数ならではの小回りの良さに加え、ネットワークを活用することで高い生産性を維持してきた。 |
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独自の管理システムを運用 | |||
現場に流す際には、図面とともに、作業指示書の役割を兼ねた現品票を添付する。この現品票には、品名(図番)・納期・個数の他にバーコードが印字されており、ここにはAP100で作成したプログラムのファイルナンバーが表現されている。現場の曲げ担当者はバーコードリーダーで読み込むことでSDDからAP100で作成した展開図、立体姿図を呼び出し、AMNC/PCで曲げ加工データを作成して、加工する。 このバーコード付きの現品票を出力するソフトウエアは、同社が外部に委託して開発したもの。 「生産管理システムの開発を外部に委託しようとした際、出荷・個数・納期などの管理をどのように行うか、打ち合わせを重ねましたが、一度に全部は実現できないと判断しました。ひとまずはバーコードで管理し、現品票を製品に貼付するというところからスタートしようと考え、それだけの機能しか持たないソフトをつくってもらいました。導入してから約1年半、非常にうまく運用できていますので、そろそろ次のステップに移りたいと考えているところです」。 |
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発注元とのネットワーク化が課題 | |||
同社が発注元から受け取る図面は、ほぼすべて紙図面で、しかもリピート率はわずか5%。メインの発注元からはDXFで取り寄せることもできるが、レイヤーが分けられておらず、統合された状態で送られてくるうえに、得意先はAutoCAD、同社はAP100とプラットフォームが異なるため一括消去が難しく、CAMに不要な寸法線などを手作業で1つずつ消していかなくてはならない。そのため、これまでは効率を重視して、東野社長ともう1名のプログラム担当者がAP100で描き起こしていた。 「しかし、いつまでもこんなやり方を続けるわけにはいかない。そういう判断から、お客さまと協力し合いながら、3次元CADによるデータの受け渡しに取り組んでいるところです。当社では今年8月に3次元ソリッド板金CAD SheetWorksを導入し、お客さまがSolidWorksで作成したデータを受け渡しできるように現在検証作業を行っています」。 発注元との連携により、同社と発注元との間でもデータの2度づくりを防止することができれば、工数削減や不良撃退、ひいてはコストダウン、発注元の競争力強化に繋がる。 「お客さまも今、生き残りを賭けた熾烈な戦いをされているのがひしひしと伝わってきます。当社が力を付け、良いモノを安くつくってお客さまに提供できれば、お客さまが生き残る手助けができる。当社は、コ ミュニケーションによる会社同士の結び付き―お客さまとの本当のネットワークを構築できていると思います。 |
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