IT活用インタビュー | |
デジタルデータを有効活用 − 「板金ケース.com」立ち上げ、Web販売網の構築にも意欲 − |
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「私が事業を継承した当時、自動プロはAP40を使用していました。発注元から受け取った図面はCADで描かれているにもかかわらず、AP40だと三面図を紙で受け取り1つひとつ手作業で展開しなければならない。リピート率が50%以下で、試作が多くロットが小さい多品種少量生産に対応する当社の場合、プログラム工程が大きなウエイトを占めていました。新規品が多いと、手間ばかりかかってしまい、プログラム工程でいかに効率化を果たすかが切実な課題でした」(星社長)。 星社長が採った対策は2つある。1つはAP100の三面図展開ソフトによる三面図(DXF)からの展開を実現すること、もう1つは、三面図展開機能を活用するために、紙ではなくDXFで三面図を提供してもらえるよう発注元の協力を取り付けることだった。 |
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発注元にDXFでの提供を根回し | |||
「AP100を導入したことで、初めてデジタルデータが社内に採り入れられました。プログラム工程で、人手を介してつくり直すのと、あらかじめ電子化されているデータを活用するのとでは、担当者の負荷、ヒューマンエラーの件数などに格段の差が生じました」(星社長)。 AP100の導入効果に手応えをつかんだ星社長は、それ以降、デジタルデータの特長を最大限活用できる受注体制の構築に奮闘する。まずは、受注の際に電子データを提供してくれるよう発注元に依頼し、図面のやりとりをスムーズに進めるために、発注元の設計者に対して、製品形状と寸法線を分けるといった基本的なところから図面データの作成方法について要望を出していった。 「単にソフトを入れるだけでなく、最大限活用するために発注元の設計上流まで遡り、より効率的な運用ができるような提案をしていきました。デジタルデータをスムーズに活用できるようなれば、当社にとっては工数削減・生産性向上・省熟化に繋がりますし、社員の負担軽減にもなる。お客さまにとっては図面を出力する必要がないなどの経費節減の他、納期短縮・発注コスト低減に繋がります」(星社長)。 |
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受注図面は100%、DXFデータ | |||
PRの甲斐あって、社長就任後の2年半をかけて、ほとんどすべての得意先からデジタルデータを受け取る体制を構築。「お客さまに対してここまで具体的な要望を出すことができたのは、父である星
裕会長が築いた人脈、信頼関係のたまものです」と星社長は尊敬の念を込めて語る。 同社の取引業種は創業以来、製鉄所・発電所などの社会インフラ関連、プリント基板・タッチパネルなどの電子機器製造装置関連が2本柱。電子機器関連は2000年代に入ってから新規の顧客を増やしていった。現在の得意先は20社以上、売上の大部分を占める主要6社から受け取る図面は100%、DXFデータで紙図面は皆無となっている。 「当社に限っては、主要6社は100%、DXFデータを提供してもらっています」(星社長) |
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三面図をデータで管理、現場から閲覧できる体制を構築 | |||
メールで受け取ったDXFデータをAP100で読み込み、三面図展開ソフトで展開を行ったのち、展開図と立体姿図をSDDに記録する。現場の担当者は、ネットワーク対応のNTマシンの場合、AMNC/PC上で展開図・立体姿図を呼び出して加工データを作成し、加工に入る。ネットワークに対応していないベンディングマシンFBDV-5012LDの場合、ちょうどネットワーク対応マシンのAMNC/PCがある位置に液晶ディスプレイを設置し、サーバーでフォルダ管理している発注元のDXFデータを参照できる仕組みを構築している。 この仕組みの発案者である製造部の鈴木道人さんは、「図面は汚れたり紛失したりするので、カタチの変わらない図面がほしいとずっと考えていました。普通なら製作図面を紙で出力して現場に流すのでしょうが、データの方が管理しやすいし、当社の体質に合っている。それを画面に呼び出せるようにすれば良い、と考えました。これもすべての図面をDXFデータで提供してもらえるからこそ実現できたことです」と語っている。 「この仕組みは今のところ曲げ工程だけに導入していますが、今後はカシメとかスポット溶接といった他の工程にも導入したいと考えています。また、以前手がけた製品など、数少ない紙図面もスキャナで取り込んでドキュメント活用ソフトDocuWorksの形式で保存して、現場の端末から呼び出せるような仕組みも構築しています」(星社長) |
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「ワンプッシュ立体」でプログラム工数を大幅改善 | |||
「本当にすばらしい」と星社長は絶賛する。「同業者の方は、三面図をスキャンしたら一発で立体になるようなソフトがあったらいいなと思ったことが一度はあると思いますが、それに近い。特に当社のように、試作が多くリピート率が低い多品種少量生産体制で、新規品のDXFが100%そろっているような場合にはまさにうってつけでした」(星社長)。 担当の鈴木道人さんは、「ワンプッシュ立体の導入で、展開に要する作業時間が大幅に短縮されました」と語っている。 ■ワンプッシュ立体の詳細はこちらをご覧ください |
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板金ケースの販売サイトを立ち上げ | |||
「昨年11月に東京ビッグサイトで開催された『産業交流展2009』に板金製造業として出展する際、何を展示しようか考えたのがきっかけでした。展示会には、当社では足下にも及ばないような高い加工技術を持った板金屋さんが多数出展してくる。しかし、加工技術でPRするのはあくまでもプロダクトアウト的な発想であって、当社なりにマーケットインの発想を推し進めていくことはできる。そして、お客さまが困っていて、当社の技術と規模で提供できるサービスとして、Webを通じてセミスタンダード(準標準品)・セミオーダー(準特注品)の板金ケースを販売することを考え付きました」。 同社が昨年12月に立ち上げた販売サイト「板金ケース.com」(http://www.bankincase.com)を訪れた利用者は、まずAからFの6タイプから形状を選び、寸法を指定する。素材を選び(標準はSPCC・SUS443 CT・A5052Sのいずれか)、穴あけ加工の数・位置、シルク印刷、塗装、表面処理などのオプションを指定することで誰でも概算見積りを確認することができる。製作を進める場合には連絡先などを入力し、担当者から折り返し確定見積りや詳細な仕様確認などが行われる。 「以前から、市販のケースメーカーの規格品に穴をあけるといった仕事がありましたから、ニーズはあるのではないかと考えていました。取引しているお客さまや展示会などで当社のブースを訪れたお客さまからも、『おもしろいビジネスモデルだ』、『ぜひ頼みたい』と好評をいただいております」。 「今後は、ワンプッシュ立体や曲げ加工データ作成全自動CAM Dr.ABE_Bendのようなデータの効果的な活用により生産性を向上する仕組みを積極的に採り入れていくとともに、この業界ではまだまだ未開拓のWebを利用した販売網の構築に取り組んでいきたい」と語る星社長は発想力で新しい道を切り拓く。 |
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