IT活用インタビュー
 
日本の本社工場は開発・設計を主に エンジニアリング力強化

−インドネシア工場でOEMにも対応−
上 同社のインドネシア工場 「PT.MIYAZAWA INDONESIA」
左 インドネシア工場内の風景 / 右 昨年末に導入されたFO-3015NT
株式会社ミヤザワ
代表取締役 宮澤 安三
住所 長野県上伊那郡南箕輪村8212-2
TEL 0265-76-2232
設立 1982 年
従業員数 40名(日本)
25 名(インドネシア)
業種 食品機械製造・精密板金加工・ 精密機械加工・省力化機械設計 製作・洗浄機・水門・粉体静電 塗装、菓子製造・販売
URL http://www.avis.ne.jp/~myzw/
   
会社経歴

1979 年、宮澤安三社長が個人事業とし て創業。1985 年、3 工場を一本化し、現住所に本社工場を設立。1991 年に、 自動倉庫・自動搬入出装置・情報システムを導入し、NCT システムによるライ ン化を行い、24 時間稼働体制を構築。1998 年、インドネシアに工場を設立。 ISO9002 認証取得済み。


主要設備
● パンチ・レーザ複合マシン:EML-3610NT ●レーザマシン:FO-3015NT、 ●ベンディングマシン:FBD V -1253LD・5012LD・8025E、 ● 2次元CAD/CAM:AP100 ●自動倉庫MARS
 
 一貫生産によりOEM 製品と自社ブランド製品を生産

▲(株)ミヤザワ 本社工場(日本)外観
 同社は1979 年、宮澤社長が26 歳のときに創業。当初は旋盤加工からスタート、現在では食品機械関連、通信機の筐体・電装制御ボックスなどを手がける。

 本社工場では開発・設計、プログラム作成、板金加工を、第2 工場で組立・塗装、第3 工場で組立・機械加工を行う。

 メインの食品機械関連事業は、設計から部材加工、溶接、塗装、電装品の組み付け・配線までの一貫生産に対応し、食品機械メーカーへのOEM 供給や、自社ブランド製品である「食品用ステンレスボール洗浄機」の製造・販売まで行っている。

 以下、宮澤社長にお話を聞く。
 研修生がきっかけでインドネシアへ進出

▲2 次元CAD/CAM AP100 で作成した展開図と立体姿図

▲中・厚板の切断はFO-3015NT で行う
 「インドネシアに進出するきっかけになったのは、15 年ほど前、海外からの研修生を登用するようになり、紹介された人材の中に、インドネシア人がいたことでした。彼らは大変優秀で学習意欲も高かったです」。

 「しかし、帰国した研修生が当社で得た技術を活かせる職種につけるかというと、必ずしもそうではありませんでした。学んだことを活かせない状況を勿体ないと思い、その技術を活かす方法のひとつとして、インドネシアへの工場設立を考え始めました」。

 「そして、彼らが帰国する際には、私も同行し調査も兼ねて現地の人たちに会いに行きました。彼らは大変温厚・勤勉な人柄でした。そんな彼らの人柄が、私の性格と合ったということもあり工場の設立を決心しました。それから数年かけて調査に調査を重ねていきました」。

 そして創業19 年目となる1998 年、インドネシア・スラバヤ市の工業団地に「PT.MIYAZAWA INDONESIA」を設立、海外進出を果たした。

 1990 年代中頃は、円高を背景に、中国や東南アジアへの海外移転が盛んになった時期。とはいえ、いち板金サプライヤーが海外に進出する例は少なく、まして、同社のように、単独で海外進出を果たしたのは、希有な例といえる。

 「お客さまと一緒に進出したわけではありませんから、はじめから日本で受けた仕事をインドネシアに流すつもりでした。進出する前からメインの食品機械メーカーのお客さまには『インドネシアでやるから、これだけコストを下げられます』とお話しし、協力を取り付けました。お客さまが一番心配するのは品質なので、最初の仕事を受注したときには、実際に現地に足を運んでもらい、直接確認してもらって、日本への納品を承認してもらいました」。

 インドネシア工場の成長コストダウン強化へ
 「日本で仕事を受注して、そこからインドネシアに仕事の依頼を出しているので、日本の本社工場が親会社、インドネシア工場が協力工場という関係に近いと思います。当社はもともと、設計から組配までの一貫生産、OEM 供給に対応していましたが、インドネシアで部材だけ加工して、日本で組み立てていたのではコストはたいして下がりません。多品種少量製品の場合、最も人手がかかるのが溶接以降の
工程だからです。ですから、インドネシア工場にははじめから、展開・プログラムから部材加工、溶接、塗装、組立配線まで一式、任せられるようにするつもりで進めてきました」。

 食品機械1 台あたりの図面枚数は200 〜 300 枚。食品機械メーカーから図面を受け取ると、即、データでインドネシアへ送る。「今ではすっかり丸投げです」と宮澤社長。

 インドネシアでは、日本から送られてきた図面から、2 次元CAD/CAM AP100 などの自動プロで展開・CAM 割付を行う。それを、「日本からの貸し出しでなく、インドネシア工場が単独で購入した最初の機械」(宮澤社長)、レーザマシンFO-3015NT + LST-3015FO をはじめ、各種加工マシンで加工する。材料は現地の日系商社を通じて日本製の高品質なものを調達している。その後、溶接、塗装、組立・配線まで行って、ほぼ最終製品の状態で日本へ出荷する。


▲2007 年12 月に導入したEML-3610NT。薄板の精密加工に優れ、加工時間の短縮に貢献
 インドネシア研修生の育成

▲曲げ工程のベンディングマシン群
 「インドネシア工場には、常駐の日本人はおらず、現地のスタッフ25 名のみで運用していますが、板金加工の品質にしても、ステンレスの磨きにしても日本製と遜色ありません」と宮澤社長はこともなげに話したが、現地のスタッフのみでそこまでの品質を確保できるのは、同社がこれまでに続けてきた教育のたまものだ。

 日本に来た研修生も帰国の半年くらい前になると、研修生自身から学びたいことを伝えてくることもあり、着実にスキルアップに繋げている。そうした優秀な人材の中には、同社のインドネシア工場に就職する者もある。現工場長は、日本の本社工場でプログラムまで習得した人材で、同社の仕事の内容を熟知し、日本語も話す。このような工場の核となる人材がインドネシア工場には6 人いて、それぞれがリーダーを勤め、現場をまとめ上げ、現地で採用したスタッフの育成も行っている。

 「現地のスタッフだけに任せて大丈夫か、とよく言われます。しかし、設立から13 年が経ち、お互いに信頼関係を築けています。もちろん、信頼しても放任するのではなく、月に1 回は私自身が現地を訪問し、細かい指導をしています。逆に、日本が忙しいときには、インドネシアから応援に来てもらいます。日本のスタッフと同じことができるだけのスキルを備えていますから、もちろん即戦力です」。

 営業はグローバルに展開

▲自社開発製品「 食品用ステンレスボール洗浄機」の組立中
 将来の展望を聞くと、宮澤社長は「今後は、日本から流れてくる仕事だけでなく、現地でも仕事を受注し、なおかつ利益を上げられるようにしていきたいと考えています」と話す。

 同社のインドネシア工場の最大の特長は、単独で進出して以来、10 年以上かけて現地に根ざし、現地スタッフだけで日本品質の製品を供給できるという点にある。

 「インドネシアでも、ローカルベンダー同士で競争があります。ほとんどがコスト競争で、それと比べると当社の製品は高価かもしれませんが、品質を重視したコストパフォーマンスでは負けません。今後、営業はグローバルに展開していくつもりです。当社がインドネシアでつくった特徴ある製品、できれば完成品を、インドネシア国内はもちろん、FTA で関税がかからないASEAN 諸国やインド、中国へ向けて販売していきたいと思います。しかし、現地で受注する仕事は現地の価格になってしまいますが、利益を上げるために、設備投資をはじめ、様々な合理化手法を模索していきます」

 3 次元CAD の活用でエンジニアリング力の強化を目指す

▲組立が終わって調整中の自社開発商品「 食品用ステンレスボール洗浄機」
 “拡がり”を目指すインドネシア工場に対して、日本の本工場は“深み”を目指す。

 「今後は、食品機械以外の板金加工の仕事もできるだけインドネシアへ移管していこうと考えています。そして日本では、エンジニアリング主体の開発・設計、試作や高付加価値製品の製造、営業へと比重をシフトしていきます」。

 エンジニアリングを支援するツールとして、宮澤社長が注目しているのが3 次元ソリッド板金CAD SheetWorks。

 「3 次元はおもしろい。開発・設計から行っている当社の場合、3 次元で完成形から描けることは大きい。SheetWorks なら板厚の情報も持てるし、配線・配管まで手軽にでき、組立性の検証や必要な寸法の抽出、材料取りまでできる。さらに、重心の算定、振動解析や応力計算、熱伝導のシミュレーションもできる。そうなると、これまでは現場で実際に試作してみないと分からなかったことが、画面上でほとんどシミュレーションできます。そこからバラシ、展開、CAM 割付、Dr.ABE_Bend による曲げ加工データの自動生成まで一気にでき、すぐに加工に入れる。設計から試作までの段取り工数がまったくちがってきます。エンジニアリング力の強化を目指す当社にとって、これほどうってつけの設備はありません」。

 開発・設計力を備えた日本の本社工場と、日本品質でモノづくりができるインドネシア工場。この両輪を活かして、宮澤社長はさらなる成長を目指す。

 
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