IT活用インタビュー
 
ファイバーレーザ溶接ロボットシステムによる
高品位溶接・加工領域拡大で差別化を図る


−「ウイルスセーフサービス」でウイルス感染を予防−
次世代レーザ溶接機として期待されるファイバーレーザ溶接ロボットシステム
株式会社 安秀工業
代表取締役 安達 秀男
本社工場 茨城県筑西市蒔田2-2
真壁工場 茨城県桜川市真壁町羽島字日月86-1
五所工場 茨城県筑西市森添島1916-1
TEL 0296-24-3646(本社)
設立 1973年
従業員数 140 名(茨城県内3 工場の合計)
業種 OA 機器・FA 機器・情報通信機器などの精密板金加工・プレス加工・溶接組立
   
会社経歴 1973 年、茨城県筑西市(旧下館市)にて設立。プレス加工・組立から始め、1977 年から板金加工を手がける。
茨城県内に3 拠点をもち、今年3 月には本社工場の設備を五所工場へ移設、現在は五所工場が主力工場となっている。
1992 年に会津工場(福島県)を設立、2002 年には江陰安秀工業有限公司(江蘇省)を設立し、中国進出を果たす。
ISO9001、ISO14001 取得済。

主要設備
● パンチ・レーザ複合マシン:EML-3510NT+AS-510RM
● レーザマシン×1 台
● パンチングマシン:EMZ-3510NTP+ASR-48M、VIPROS Z-358PDC+MP-1253NJ など3 台
● ベンディングマシン:HDS-2203NT/8025NT、FBDV-8020NT×2 台、FBDV-1253NT など9台
● 3 次元ソリッド板金CAD:SheetWorks
● 2 次元CAD/CAM:AP100
● 曲げ加工データ作成全自動CAM:Dr.ABE_Bend
● ファイバーレーザ溶接ロボットシステム(出力6kW)
● YAGレーザ溶接ロボット:YLR-1500V
●その他:ワイヤ放電加工機×3 台、3 次元測定器、表面粗度測定器など
 
 セキュリティ管理の危機感

▲茨城県筑西市にある活タ秀工業 五所工場の新社屋

▲代表取締役の安達秀男氏

▲製造部部長の安達信行氏
 「当社のネットワーク環境はパソコン(以下、PC)だけだと38 台、加工マシンも含めれば40 台以上の端末がネットワークに接続していることになります」と製造部部長の安達信行氏は語る。

 「当社は1999 年に2 次元CAD/CAM AP100 とFBDV-1253NT を導入して以来、生産管理からプログラム工程、ブランク・曲げ工程と、あらゆる工程でデジタル化・ネットワーク化を推進してきました。しかし、会社の成長に合わせ、必要に応じてPC も増設・更新していくと、管理が煩雑になってしまい、コンピュータウイルス(以下、ウイルス)対策やセキュリティ管理についても十分に対応できていなかったというのが実態でした」。

 国内4 拠点、海外1 拠点 デジタル化・ネットワーク化を推進

▲AP100 で展開を行った後は立体姿図でチェックを行う

▲得意先から3 次元の図面データを受け取ったときはSheetWorks で3 次元展開を行う
 (株)安秀工業は、OA 機器・FA 機器・情報通信機器・計測機器・医療機器などの筐体・機構部品をメインに、精密板金加工・プレス加工・溶接組立を手がけている。

 茨城県内に本社工場(筑西市)、真壁工場(桜川市真壁町)、五所工場(筑西市)の3 つの拠点をもち、1992 年には会津工場(福島県河沼郡)を設立、2002 年には中国にも進出し、江陰安秀工業有限公司(江蘇省)を設立している。従業員数は茨城県内の3 拠点で約140 名、会津工場が約30 名、中国工場が約90 名――国内4 拠点、海外1拠点を合計したグループ全体の従業員数は約260 名となる。

 今年3 月には、本社工場の生産設備を五所工場へと移設。現在は五所工場が主力工場となっている。

 板金加工設備だけでなく最大200 トンのプレスマシン、ワイヤ放電加工機、マシニングセンタなどを設備しており、板厚0.1oの薄板から形鋼の加工、治具の製作まで、フレキシブルに対応する。また、溶接工程にはMIG、TIG、YAGレーザ溶接機のほか、今年に入ってからはファイバーレーザ溶接ロボットシステムを導入し、高効率・高品位な溶接組立に対応することで他社との差別化を図っている。

 同社がデジタル化・ネットワーク化に本格的に着手したのは1999 年。AP100 とFBD V -1253NT を導入したのを同社皮切りに、およそ1 年置きに次々とネットワーク対応型の加工マシンを導入していった。2005 年には生産管理システムWILL 受注・出荷モジュール+M を導入。2010 年には曲げ加工データ作成全自動CAM Dr.ABE_Bend を導入して加工データ作成の外段取り化を図るとともに、3 次元ソリッド板金CAD SheetWorks を導入し、将来的には受けCADとしてだけでなく、製造性確認や展開作業の主力としても活用していこうと考えている。

 すべての板金工程でデータを徹底活用

▲パンチ・レーザ複合マシンEML-3510NT。材料棚、PDC(金型自動交換装置)、TK 付きで自動運転に対応する

▲Dr.ABE_Bend が作成した曲げ加工データをバーコードで呼び出して加工する。主に新規品はバーコードでデータを呼び出し後、曲げシミュレーションでチェックする
 得意先は多岐にわたるが、メインの得意先からの受注は、EDI を通じてWILL に受注登録される。技術情報は紙図面、FAX、DXF 形式の2 次元データが主で、SheetWorks による3 次元データの受け取りも可能となっている。

 展開・ネスティングはAP100 で行い、板金ネットワークサーバーASIS100PCL(SDD)に保存された展開図データをDr.ABE_Bend がバッチで読み込んで曲げ加工可否の判定を行い、曲がると判断した製品の曲げ加工データを自動生成する。

 WILL から発行される作業指示書は、図面の余白にバーコードが印刷され、裏面には各工程のチェック項目が印刷されており、原則A3 用紙1 枚で作業指示書・図面・チェック表の用を果たす。現場にはその他に、ブランク工程にはバラシ作業用のネスティング指示書を、溶接工程には余計な寸法を取り除き、形状・溶接指示・組み上がり寸法だけが記載された溶接図面を別途添付して流している。

 各工程にはWILL の端末が設置されており、作業完了時に作業指示書のバーコードを読み込むことで進捗実績を吸い上げ。同社の営業担当者は4 名で、各自が20 社前後の得意先をもっているため、受注製品の進捗状況を把握するツールとして活躍している。

 ウイルス対策の必要性を痛感

▲曲げ工程。6 台のネットワーク対応型ベンディングマシンを設備している
 冒頭でも示したように、このようにデジタル化・ネットワーク化に対応していく一方で、今度はウイルス対策・セキュリティ管理の不十分さが課題として浮上してきた。

 安達部長は「ウイルス対策は、社員が各自の判断でフリーのアンチウイルス(ウイルス駆除)ソフトを導入している状況でした。PC の中には、Web サイトを閲覧したときにキャッシュとして保存される画像ファイルがランダムに表示されるといった、軽微ではありますが、ウイルスによるものと思われる症状もみられました」と語っている。

 全社的に社有PC のウイルス対策に取り組み始めたのは、今年3 月に行った五所工場への生産設備の移設がきっかけだった。

 「当社のセキュリティ管理が甘いことは理解していましたから、ずっと危機感を抱き続けていました。PC 内の画像が表示されるくらいなら何でもありませんが、ウイルスの性格によってはもっと深刻な事態に陥る可能性もあったわけです。ネットワークにはAP100 のほか、加工データが集約しているASIS100PCL(SDD)、WILL のサーバー、図面のスキャンデータ、ネットワーク対応型の加工マシンなど、事業の継続まで左右するような重要な機器やマシンが接続しています。万が一、こうした機器がネットワーク経由でウイルスに感染し、復旧不能になったり情報が漏洩したりするような事態になれば、当社の信用は失墜しかねません。そこで今回の生産設備の移設を機に『ここで手を打とう』と決断し、感染が疑われるものは残さず取り除く考えで、ウイルス対策を実施することにしました」。

 「ウイルスセーフサービス」の導入

▲ファイバーレーザ溶接後の製品サンプル
 ウイルス対策のために複数の製品・サービスを調査したが、すでに感染が疑われる状態から、駆除まで含めて対応する会社は少なかった。

 「駆除まで含めて対応してもらえるだけでなく、板金企業の現場の事情をよく理解している会社にお願いした方がよいだろうと考え、アマダアイリンクサービスの『ウイルスセーフサービス』を導入しました」。

 このサービスは、PC のウイルス感染状況、アンチウイルスソフトの稼働状況など、ウイルスに関するPC の状態を監視し、異常があれば電話で報告、必要に応じて専門スタッフがPC をリモート(遠隔)操作してウイルスの隔離・駆除などに対応する。

 また、アンチウイルスソフトのライセンス切れが発生しないよう、煩雑なライセンス管理の業務を代行。さらに、インターネットにアクセスする必要がないAP100 やASIS100PCL(SDD)などの特定業務に特化したマシンは、インターネットへの接続を制限してウイルス感染のリスクを最小限にできる。

 「会社の危機にも直結するウイルスの水際対策を打てたことは、大きな収穫です。これまでは情報系に通じている現場のスタッフからも、セキュリティ管理の甘さを危ぶむ声が出ていました。『ウイルスセーフサービス』を導入したことで胸をなで下ろしているのは私ひとりではないと思います」。

 ファイバーレーザ溶接ロボットシステム

▲各工程に生産管理システムWILL の端末を設置し、バーコードを読み込んで進捗情報を吸い上げ管理する

▲アマダアイリンクサービスが提供する「ウイルスセーフサービス」の監視装置
 同社は最近、次世代のレーザ溶接技術として期待されるアマダ製のファイバーレーザ溶接ロボットシステム(出力6kW)を導入。同社の主力であるOA/FA 機器をはじめ、各種筐体やフレームの溶接に活用していこうとしている。

 安達部長は「ファイバーレーザ溶接は、ビーム品質が高く熱影響を最低限に抑えられるために、鉄やステンレスといった従来の材料でも、歪みの少ない高品位な溶接が可能です。特に筐体の溶接の場合、パルス発振のYAG レーザ溶接よりも、溶け込みが深いファイバーレーザによる連続溶接の方が、強度・気密性・仕上がり品質と、すべての点で有利です。また、従来のTIG 溶接では難しかったアルミ合金・銅・真鍮・チタンといった高反射材や、異種材の接合にも対応できることから、加工領域の拡大による他社との差別化、新規分野の開拓にも貢献してくれるものと期待しています。工法置換は一朝一夕でできるものではありませんから稼働率はまだまだ高くありませんが、今後は積極的にPRしていき、受注につなげていきたいと考えています」と締めくくった。

 
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