9. アルミニウム

アルミニウムは比重が銅や鉄の約1/3であり、航空機、船舶、車両などの交通機関、建築、土木などの分野で軽量化に役立っている。
アルミニウムは酸化するとアルミナになるが、これが耐食性のよい酸化被膜になり酸化の進行を防止するので優れた耐食性を持つ。

 

【1.種類】
アルミニウムは軟らかく展伸性に富むが、用途によってさらに強度を高めるなどの性質を改善する必要がある場合には、種々の元素を加えたアルミニウム合金として使用される。

アルミニウム合金の分類を以下に示す
※非熱処理型合金 純アルミニウム(1000系)
Al−Mn系合金(3000系)
Al−Si系合金(4000系)
Al−Mg系合金(5000系)
※熱処理型合金 Al−Cu−Mg系合金(2000系)
Al−Mg−Si系合金(6000系)
Al−Zn−Mg系合金(7000系)

 

【2.1000系アルミニウム(1100,1200)】

1000系は、99%以上の純アルミニウム系の材料である。
この系の材料は加工性、耐食性、溶接性などに優れるが、強度が低いので構造材には適さない。しかし、強度を要さない家庭用品、日用品、電気器具などに多く使われている。

 

【3.2000系アルミニウム(2017,2024)】

ジュラルミン、超ジュラルミンの名称で知られる2017,2024が代表的なもので、鋼材に匹敵する強度を持つ。
しかし比較的多くの銅を含むため耐食性に劣り、腐食環境にさらされる場合は十分な防食処理を必要とする。
航空機、ギヤー、油圧部品等に使われる。

 

【4.3000系アルミニウム(3003,3004)】

3003はこの系の代表的合金で、Mnの添加により純アルミニ ウムの加工性、耐食性を低下させることなく、強度を1100より10%増加させている。化粧板、器物、建材、容器などに広い用途を持つ。
3003に相当する合金にMgを1%程度添加した3004は、さらに強度を増加させ、深絞り性にも優れているので、アルミ缶ボディ、カラーアルミ、電球口金、屋根板などの材料として需要が増加している。

 

【5.4000系アルミニウム(4032,4043)】
4043はSi粒子の分散により陽極酸化処理被膜が灰色を呈するため、ビル建築の外装パネルにも使用されている。
4032は鍛造ピストン材料として用いられている。

 

【6.5000系アルミニウム(5005,5052,5083)】
Mg添加量の比較的少ないものは装飾用材、器物用材に使用され、多いものは構造用として使用される。
5005はMg添加量の少ない合金の代表的なものである。
加工性、耐食性が優れており、建築用内装天井板、建材、器物材として用いられている。
5052はMg添加量が中程度の合金の代表的なものである。
中程度の強度を持つ材料として最も一般的であり、加工性、耐食性がよく、耐海水性が優れている。一般板金、船舶、車両、建築、缶エ ンド、ハニカムコアなどに使われている。
5083はMg添加量が多い合金で非熱処理合金としては最も優れた強度を持ち、溶接性も良好であり、耐海水性、耐低温性も良好である。
このため、溶接構造材として船舶、車両、温用タンク、圧力容器などに使用されている。

 

【7.6000系アルミニウム(6061−T6、6063)】
この系の合金は強度、耐食性とも良好で、代表的な構造用材として挙げられる。
6061−T6は熱処理型の耐食性合金です。耐力25kg/mm2以上でSS400に相当し、設計上たわみを問題としなければ、同等の許容応力がとれるという利点がある。
鉄塔、クレーンなどに用いられる。
6063は優れた押出性を備え、複雑な断面形状が得られ、耐食性、表面処理性も良好。
建築用サッシを中心に6061ほど強度を必要としない構造材として使用される。

 

【8.7000系アルミニウム(7075,7N01)】

Al−Zn−Mg−Cu系合金は、アルミニウム合金のなかで最も強度を持つが、耐食性は劣る。その代表的なものは7075で航空機、スキーストック等に使用されている。
Al−Zn−Mg系合金は比較的高い強さを持ち、溶接後の熱影響部も自然時効により母材に近い強さに回復する。耐食性もかなり良好。7N01がその代表的合金で溶接構造用材料として鉄道車両などに用いられている。