著名者インタビュー
メニュー前ページ次ページ |

 2002/4
勝ち組企業になるための"経営者の自社診断法"


経営コンサルタント
長岡達雄氏
経営士。流通業を経て、幅広い分野での経営コンサルティングを行っている。ニューヨーク駐在、JETROコロンビア派遣、JICAネパール派遣など海外での経験も豊富。企業内部に深く入り、問題点を経営者とともに解決していくことを得意とする。コンサルティングの関与先は、国内のみならず、広く海外にも及び、著作・講演も国内外で行っている。  
 勝ち組企業になるための"経営者の自社診断法"
 昨今の会社経営を取り巻く環境変化のスピードは極めて早く、経営戦略を間違えると、上場会社といえども存在が不可能になることは周知の通りです。今回の不況の特徴は、需要の減退とそれに基づく価格下落が同時進行する、いわゆるデフレスパイラルに泥沼化していることです。中小企業の経営者は、ここで改めて自社を厳しく診断分析し、何としてもこの大不況下での生き残りをはかり、次の発展を目指す「勝ち組」にならねばなりません。会社経営は、規模が大きいからといって安心できません。収支バランスがとれて、いつも前向きに発展していることが必要です。
 ではそのためにはどのようにすればよいのでしょうか。ここでは、経営者のメンタルテストからはじめて、会社の戦略、経営の資源であるヒト・モノ・カネをいかに有効活用するかを改めて考え、そのうえで改善すべきものは改善し、輝かしい未来に向けて突き進んでいただきたいとおもいます。次に記すことは基本的なことばかりですが、あなどらず改善を重ねていってください。努力したことには必ず成果が出てきます。

 

 経営者のメンタルチェック

 まず朝目がさめた時、今日も一日会社発展のために全力をささげようという、はつらつとした気持ちになっているでしょうか。身体に異常があればすぐ治療することです。健康がすべての基本です。健康であれば正しい心をもち続けることができます。よこしまな心で社会的不正を行えば、大企業といえども存在できなくなります。経営者のモラル・ハザード(倫理の欠如)がマスコミで論議されています。心すべきことです。
 社長および会社が健康であるためにお勧めするのは、「5S(整理・整頓・清潔・清掃・しつけ)」の実行です。これを毎日実行していると、物事の正しい進め方が自然とわかってきます。発展している会社の事務所や現場にはチリ一つ落ちていません。この精神が会社発展のすべての基本です。
 さらに「3ム」をなくすことです。ムリ・ムダ・ムラをなくすことで、これを実行することによりコストが削減され、必ず余裕が出てきて会社経営がうまく進むようになります。5S・3ム運動には限界がありません。やればやるほど必要性を感じ、ますます効果がでてきます。
 変化のはげしい時代においては、経営者はその変化に積極果敢に対応できる気力とフットワークをもたねばなりません。旧い価値観を捨て、発想を転換できる柔軟性も必要です。
 会社経営の全ての分野に精通し、リーダーシップをとらなければなりません。ある分野(例えば技術)のみ得意で他は全くわからないでは、経営者はつとまりません。自分の不得意分野の学習に努めてはげむことです。
 このように考えていくと、経営者は全知全能でなければならないわけですが、自分の足らないところは、外部の専門家の知恵を借り、ブレーンを育て、それをうまく使いこなして目的を達成することも、経営者に求められる能力の一つです。

 

 経営者と戦略

 現在小泉内閣は構造改革を唱えています。変化の激しい経済環境に適応していくためには、会社経営にも構造改革が必要です。現況を冷静に分析し、将来発展していく方向に向けていく「戦略」をもたねばなりません。自社の最も得意とする中核分野(コア・コンピタンス)を明確にし、そこに経営資源を集中させることです。利益の上がらない不採算部門は思い切って切り棄て、将来の発展の見込める分野にシフトして行くことです。
 単品の受注のみに依存する体質を改め、関連成長分野に多角化しておくことも必要です。ある商品では業界一番というものをもてば、これを核にして付加価値の見込める商品を開発して行く戦略も可能です。
 これを実行して行くために戦略的な中長期の経営計画を立ててみることです。これにより、自社に欠けるものが見えてきますので、それを重点的に補充することです。こうすることによって、会社の前途と夢がひらけ、上昇気運に乗って行きます。
 社会が複雑になるにつれて、各種のリスクが会社を襲います。経営者として、リスク管理の基本的知識を持ちましょう。
 経済のグローバリゼーションにより、海外での生産活動の必要性が生じてきます。事前調査を充分に行い踏み出すべきでしょう。ISO認証取得も心掛けねばなりません。

 

 経営者とヒト(人事管理)

 会社経営の成否は、人に始まり人に終わるといわれます。良い人材を採用し、適材を適所に配属し、持っている能力を十二分に発揮してもらい、会社発展に尽力してもらえるように戦略的な人事管理を行わなければなりません。会社発展に寄与した人材には、しかるべき処遇を行うべきです。
 特に会社発展の基盤となる営業や開発部門には、エース級の人材を投入すべきです。そのためには、人事管理を担当する専任者をできるかぎり置くことです。その人の能力を高めることにより、社員全体の能力を高めることができます。能力開発のための投資をおしまないことです。人材を置けない場合は、専門のアウトソーシング(外注)も考えられます。経営者自身も会社経営のキーパーソンとして、経営能力を向上させねばなりません。経営の3大資源ヒト・モノ・カネを有効に活用するためです。こうした努力をする会社は、その会社の雰囲気に表われ、それは顧客や取引先に好感をもって受け入れられ、会社発展へと結びついて行きます。会社の後事を託せる優秀な後継者の養成も必要です。

 

 経営者とモノ(商品・技術)

 自社の商品については、カスタマーオリエンテーションでなければなりません。すなわち顧客の要求を最大限、商品に反映させることです。そのためには、生産の3要素といわれる、品質(Quality)・原価(Cost)・納期(Delivery)を充分に管理することです。
 なかでもデフレスパイラル現象の昨今では、原価(コスト)削減は最重要課題です。多くの企業は人件費の安い中国や東南アジア諸国に生産基地を移転し、空洞化現象を引き起こしていますが、これに追随するかどうか、自社の立場を見極め決断せねばなりません。
 簡単に真似をされない自社独自の技術、しかも付加価値の高い技術を持てば淘汰されることはありません。そのためには、新技術・新素材等を積極的に取り入れ、自動化・省力化をはかり、コスト削減に全力を投じなければなりません。IT革命は現在小休止の様相ですが、長期的には必ず進行して行きますので、ハード・ソフト共に最新鋭のものを取り込むべきです。技術修得には全社をあげて取り組み、多くの技能士を生み出しましょう。

 

 経営者とカネ(財務管理)

 会社の経理財務は公明正大でなければなりません。オーナー社長の公私混同は排除せねばなりません。金銭の流れは帳簿により明確にせねばなりません。簿外取引には注意を要します。年次決算の基本になる月次決算で会社の現状を把握しましょう。財務諸表は的確に読み取り経営分析を行い、時系列で比較を行い、問題点に対し素早く手を打ちましょう。税金は正しく納めましょう。
 不況の長期化により、売上・利益の伸びが期待できなくなります。このような情勢の時には、有利子負債を返済すれば支払利息が減少し、利益を押し上げることになります。また売上が増えなくても黒字になるように固定費を下げ、損益分岐点を下げる努力をすることです。
 昨今行われているリストラでは、固定費の大きな割合を占める人件費の削減が目的となります。早く思い切って行った会社が良い結果を出しています。銀行の貸し渋りにより運転資金もままならず倒産する会社が増えています。資金繰りがうまく行かぬと黒字でも倒産します。得意先を今一度チェックし、不良債権をつかまされないように万全の注意を払いましょう。設備投資を行う場合は投資効果を充分に計算して実行しましょう。