【1.パーシャルベンディング】 |
パーシャルベンディングのパーシャル(partial
)は「部分的な」という意味で、図に示すようにA 、B 、C の点でワークが金型と接触して曲げを行うことであり、部分的とはこの事を指します。
パーシャルベンディングが典型的なエアーベンディングといわれる理由は、図からわかるように、底押しではなく空気と接触した状態でワークを曲げるからです。
この曲げの特徴は、曲げ角度の範囲を自由にとれることで例えば、30°の金型を使って曲げることのできる範囲は180°〜30°までの任意の角度になります。
パーシャルベンディングのV幅は、板厚の12〜15倍が適当です。
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【2.ボトミング】 |
ボトミングのボトム(bottom)は動詞形で「底に届く]という意味があります。
現場用語で「底押し」とか「底突き」とかいわれる曲げで、比較的小さい加圧力で良い曲げ精度が得られるので最も多く使われています。
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[V 幅]
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ボトミングのV幅は、下記表に示すように板厚t に応じて異なる計数を板厚t にかけて得られる数字です。
板厚t |
0.5〜2.6 |
3.0〜8 |
9〜10 |
12以上 |
V幅 |
6t |
8t |
10t |
12t |
上記表はあくまでも目安であってV幅の決定については、
他の諸要素(曲げR 、最小フランジ長、加圧力)についても考えた上で判断します。
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[i r] |
内側の曲げ半径を内アールまたはir
(inside radius)といいます。ボトミングによるir はV幅の約1/6 になります。
つまり、ir =V/6 になります。
ただし、材質により異なる場合があり、SUS やAL は若干異なります。
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[ボトミングの金型角度] |
ボトミングはスプリングバックの影響を受ける曲げです。その対策として、スプリングバック量だけ余分に曲げこむ方法がもっとも多く使われています。
90°曲げの金型角度に88°、85°、84°、80°があるのはその理由からです。 |
- スプリングバックの小さい材質・形状・板厚
・・・・90°金型を使用
- スプリングバックの大きい材質・形状・板厚
・・・・88°金型を使用
- 更にスプリングバックの大きい材質・形状・板厚
・・・・84°金型を使用
※ボトミングの場合、パンチ先端角度とV溝の角度を同じにすることが原則です。
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【3.コイニング】 |
コイニングの語源はコイン(coin)で、「硬貨をつくる」とか、「金属を硬貨にする」からきていて、きわめて正確な曲げ精度が得られる加工方法という意味です。コイニングの目的は、きわめて正確な曲げ精度と、極端に小さい内アールを得ることにありますが、ボトミングの所要トン数の約5〜8倍の加圧力を必要とします。
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[V 幅] |
コイニングに使うV幅はボトミングよりも小さく、板厚の5倍にします。
これは、ir を小さくしてパンチ先端部の食い込み量を少なくする。
V溝の面積を小さくして面圧を高める。
の2つの理由からであり、いずれも余分な圧力をかけないことを目的とします。
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[金型角度] |
コイニングはパンチ先端部が完全にワーク内に食い込んでおり、パンチとダイの面によってスプリングバックは殺されます。
したがって、ボトミングのようにスプリングバックは見込まなくてもよいので、コイニングの金型角度は求める製品角度に等しく
します。
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[加圧限度] |
コイニングは大きなトン数を必要とする曲げで、SPCC の板厚1.6ミリで1m当り75ton、2ミリで約115tonです。使用する金型の耐圧にもよりますがが、加圧限度は2mmと考えられます。(SPCC
2.0t SUS 1.5t が限度)
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[コイニングの問題点] |
・加圧力が大きいため、ベンダーの機械設備が大きくなります。
・金型の摩耗が早い
・金型に制約があります。(金型耐圧の大きい物を使用する)
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[90°曲げのコイニング加工の場合] |
右表の金型が耐圧的にみてコイニングに耐えうる金型と考えられますが、表以外の金型は耐圧が50 トン/M 以下になりコイニング加工には耐えられないと思われます。
尚、下表のパンチの分割型は、耳形状の耐圧が更に落ちるので、コイニング加工には注意を必要とします。 |
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金型種類
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金型No |
耐圧(トン/M) |
パンチ |
標準パンチ |
No16 |
100 |
グースネック型 |
No462 |
70 |
ダイ |
2Vダイ |
No121 (V=4×7 ) |
60 |
No122 (V=5×9 ) |
65 |
No123 (V=6×10 ) |
70 |
No124 (V=8×12 ) |
80 |
サッシ用1Vダイ |
No320 (V=6 ) |
95 |
No321 (V=8 ) |
95 |
No323 (V=10 ) |
95 |
No326 (V=12 ) |
100 |
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【4.三種類の曲げの使い分け】 |
3種類の曲げのうちどれを選ぶかは、製品の使用目的や機能によって決められます。
それは、曲げそのものに優劣をつけるというよりも、それぞれの曲げの特徴を活かした使いわけが必要であるということです。 |
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